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第105話
春side
「そうか」
話し終えて了さんはその一言だけで口を閉じた。
「どうしたらいい?」
郁が突然そんなことを呟いた。
俺達は驚いた。
「どうしたら」と言われても、俺自身もどうしていいかなんてわからない。
「……先生が間違って戸を閉めたとかじゃないのか?そのあとすぐ見回りに来た人に助けられたとか………春くんも知らないってことは、郁がそれを春くんに言わなかったってことはないかい?」
「……そう、なのかな?」
「予測だからわからないけど。多分だがね。」
「…うん」
まだすっきりとしていない顔をしている郁は、俺の上にまたがって座って来た。
俺の肩に頭を預けて抱きつく。
「……眠いの?」
「…うんん」
「そのまま寝てもいいよ?」
それに対しての返事はなかった。
けれどそのあとすぐにスゥスゥと寝息を立て始めた。
「郁は春くんがいればすぐに眠れるんだな」
「そうみたいね。僕たちと寝ても寝れてなかったのにね。春くんのこと信頼してるんだね。」
2人は暖かい目で郁を見つめた。
「…もう少しここで寝させます。今動いたら、また起きそうだし。」
「うん、そうしてあげて」
「はい。」
俺は郁の暖かい体を優しく抱きしめて目を瞑った。
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