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第187話

春side 数日を家で過ごして、卒業の前日に2.3時間ほどのリハーサルを行った。 今日は学生生活最後の日。 この明宮高校を卒業する。 卒業式は校長先生の話が長く感じたぐらいで、あっという間に終わりを告げた。 卒業ソングとしては定番の『旅立ちの日に』を吹奏楽部の演奏とともに体育館を退出する。 各自、クラスに戻って最後のホームルーム。 いつもと違うのは後ろと廊下に両親その他が居ること。 「じゃあ、ホームルームを始めます。最後なので少しだけ話をさせてください。 このクラスを受け持って、こうして全員そろって卒業式を迎えられたこと、ほんとに嬉しいです。 えー、教師という仕事を長いことしていれば、今ここにいる生徒だけでなくその親御さんが以前自分の生徒だったと言う経験ができるというのを他の先生から聞いたことがありました。まさかこのクラスで自分がその経験をするとは思っても見ませんでした。 そういうことも含め、とても楽しいクラスでした。ありがとうございました。改めて、皆さん卒業おめでとう。」 式で泣いていた生徒の中には、先生からの言葉に目を潤ませている者もいた。 ホームルームが終わって、教室を一通り見渡す。 ここではいろいろあった。 笑って、泣いて、後悔を繰り返した。 今はすべていい思い出だ。 「…春、行こう?」 隣に袖を引く郁がいた。 「あぁ、今行く」 校舎を出たら、両親が待っていた。 ここに来ることはもうない。 しんどかったけど、楽しかった生活がこうして幕を閉じた。

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