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第188話
郁side
ベットがかすかに揺れる感覚にうっすらと目を開ける。
「まだ寝てていいよ」
そんな声が少し離れたところで聞こえて、また眠りの世界へ落ちる。
次に目が覚めたのは、自分が昨日の夜にセットした目覚まし時計のアラーム音だった。
「…んぅ」
腕を広げてみるが、隣はすでに空っぽだ。
ムクっと起き上がって、覚醒しきっていない頭で1階に降りる。
「あ、おきた?」
「…おきたぁー、おはよー」
玄関に向かう春は既に準備を済ませてリュックを背負い、大学へ行く直前。
僕が起きる時間は春が家を出る時間。
春が家を出る前にハグをして、今日も一日頑張るエネルギーをもらう。
「ん!ちゃんと起きた!…行ってらっしゃい」
「うん、いってくる」
春を玄関まで見送って、洗面台で顔を洗って髪を整える。
「おはよーございます」
「おはよ。」
リビングに入って、挨拶をすると司季さんが挨拶を返してくれる。
明宏さんは春より早く出勤していて、平日の朝に僕と顔を合わせることはない。
キッチンに行くと、トレーに僕の朝食が置かれていた。
「何飲む?」
「オレンジで」
「はーい」
僕が起きてから朝食を摂る時間はぼーっと2人でニュースを見て過ごす。
司季さんは看護師で家から近い場所にある診療所で働いている。一応、整形外科ではあるが内科の症状の患者も見ているそう。9:30から18:30と遅くまで開いているのでたまにお世話になっている。
朝起きて30分から45分くらいで準備を終えて、司季さんと一緒に家を出る。
「「いってきます」」
僕の進学先は自転車で25分の専門学校。
自転車を駐輪場に置いて教室へ上がる。
僕の教室は6階建てのC棟4階、C402。
「おはよー」
挨拶をして入れば、何人かもう来ていて返してくれる。
「おはよ、郁」
席に着くと隣の席の真羽が声をかけてくる。
「おはよ」
「今日の高橋先生の授業、課題やってきた?」
「やったよ。訳わかんなかったけど」
「やっぱり?もう諦めたくなっちゃうよね」
「ほんとにね」
専門学校に進学した僕達は、その中にある医療事務学科にいた。
医療機関における受付業務や保険請求など2年学ぶ学科。待ち時間が長いと思っていた医療機関の中で、行われていることを少し知って反省しているところだ。
めちゃくちゃ時間かかる。
逆にあれだけの人数をあの時間でよくさばけるなと感心している。
一限から四限までしっかり内容の濃い授業が終われば、各々帰宅する。
「じゃあ、またあしたー」
「あしたねー」
真羽は専門学校から家が近く徒歩通学ため、校門で別れる。
どこかに寄り道することも無くまっすぐ家に帰る。
「ただいまー」
まだ誰も帰宅していない中、洗濯物を片す。
そうしていると春が帰宅する。
「おかえり」
「ただいま」
「今日バイトだっけ?」
「いや、急に変更になったから明日。」
「そっか」
春は卒業後すぐに飲食店のアルバイトを始めた。
授業の合間や夕方、土日を使ってしている。
僕も短期のアルバイトを2、3度やってみたくらいで、長期のものはやったことがない。
そろそろカフェのアルバイトでもしてみようかと悩んでいるところだ。
まずは春と相談して見よう。
居間で課題をしている僕の隣で、春はiPadで調べ物をしているようだった。
司季さん達が帰ってくる前に夕食を作る。
と言っても、ある程度は司季さんが準備してくれているので、焼くだけ、煮るだけ、暖めるだけといった感じだ。
2人の帰宅を待つ間にお風呂を済ませる。
そうこうしていると、先に明宏さんが帰宅して、そのあと司季さんが帰ってくる。
みんなが揃ったところで夕食。
眠くなったら春と一緒にベットへ行くのが今の生活だった。
春が居ることの安心感ははかりしれない。
とりあえずはこのままの生活が続くだろう。
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