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第189話
春side
朝起きて、隣に眠る郁の顔色を見るのが癖になっている。
郁を起こさないようにアラームはバイブ音のみ。
大学へ行く支度を済ませて、家を出る直前に郁が起きてくる。再度、顔色をみて大丈夫そうだと思ったらそのまま大学にへ向かうまでが朝のルーチンだった。
第1志望の大学へ合格した俺は理学療法学科にいる。
できるだけ授業をつめて取れるものは取っておきたいと思ったが、結構ハードなんだと今になって気がついて、少し後悔している。
1年のうちは要らない科目も多いが、本格的な内容がスタートする前にその辺をこなしておきたかった。
その中でアルバイトはきついこともあるが楽しい。
忙しい方が性にあっている気がする。
疲れた体で家に帰れば、「おかえり」と郁が迎えてくれて、これこそ癒しだ。
郁と暮らすことは郁にとって良いだけでなく、俺にとってもいい事だった。
郁の顔を見れて、安心して日々が過ごせている。
安心感と幸福感に満たされて、不安が渦巻いていた高校時代とは比べ物にならないくらい、自分自身が安定しているのがわかる。
郁だけのためじゃない。
2人のために必要なこと。
これから先の事はまだ分からない。
けれど不安はなかった。
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