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第118話

郁side さっき春に「今日来るの遅かったね」って言われた時は、正直、ドキッとした。 本当は家から外に出た時パニックになって、しばらくの間家から出れなくて、来るのが遅くなってしまった。 時々起こるこういうことにも慣れたらダメなんだろうけど、慣れきってしまった。 春と約束をしても少し遅れたりなんてよくある。 その度に「大丈夫だった?」って春は聞いてくれる。 心配してくれる。 でもこれ以上迷惑はかけれないから。 春に辛い思いはして欲しくないから。 問題を解く手が止まって、ぐるぐるとそんなことを考える。 すると突然コンコンとドアがノックされた。 些細なことなのにビックリして少しだけ震える。 「真羽だよ!郁、春、いる?ごめんね郁、驚かせたよね?少し話したいなーと思って来たんだけど!」 ドアの外から真羽の声が聞こえる。 少し安心してそっと扉を開けると「郁、元気?」と真羽が声をかけてくれた。 「元気だよ」 「うん、今日は元気そうだね。」 「前はごめんね。」 「気にしない気にしない!」 二日前に真羽が部屋を訪ねてきてくれた時、過換気症候群の症状が出てしまった。だから「また話そうね」って。 「それで、どうかした?」 「あ、うん!俊と喧嘩したんだけど仲直りした!」 「え?」 「前にね、ここ来た時喧嘩した時だったんだけど、さっきね、俊が誤ってきて僕の好きなバームクーヘンをいっぱいくれたからおすそ分け!全部食べたら太っちゃうから!」 「真羽は充分細いよ!」 「郁に言われたくないなー。もっと肉付けなきゃ!!」 「うん…」 「ところで郁は勉強中?邪魔してごめんね?」 「気にしなくてもいいよ?」 「んー、とりあえず話したいことは終わっちゃったから、今日のところは戻るねー!おやすみ!」 「おやすみ」 真羽は「またはなそー!」と言って出ていった。

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