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第194話

郁side 働き始めて1年半。 この間、お母さんから今までのお年玉や僕のために貯めていた通帳をもらった。 「これは郁が大人になったら渡そうと思ってたの。これを使って車を買うでもいいし、春くんとの結婚式に使ってもいい。郁の好きなように使いなさい。」 そう言ってくれたお母さん達には感謝しかない。 けれどもしもの時のために、このお金には手をつけないでしまって置く。 コツコツと給料を貯金して、ある程度貯まってきた。 生活費その他の支払い以外でほとんど使うことがなかった。 遊びに行くといっても近場だったりするので、そんなに使わないでいた。 今回はそのお金で車を買うことにした。 免許は専門学生の時に春と取りに行ったので持ってはいるものの、運転していないのでペーパードライバーだ。 逆に春は明宏さんの車をかりて、たまに運転するから慣れている。 なぜこのタイミングで車の購入かといえば、僕の会社は複数の店舗があり、異動もあれば別店舗の手伝いに行ったりすることもある。それを考えて今後のためにも持っていた方がいいということになったのだ。 家の前に車1台とめるのに十分なスペースもある。 そんなこんなで、どの車にしようか悩んでいた。 「ね、春。」 「ん?」 「見すぎて何がいいかわからなくなっちゃった」 「そうだなー。郁がいいかもって言ってたこれは?」 ツートンカラーで白と水色のその車は、一番最初に見に行った所のだった。 1人には十分な広さがあり、収納にも不便はなさそうな内装。 「んー、もうそれにしようかな」 「郁の好きなの選びな?」 「うーん。」 と、延々唸った末に結局その車を買うことにした。 納車まで2ヶ月。 そんなに急ぐものでもないし、2ヶ月後のその日にしたのだった。 納車してから、といえば。 手で抱えれるけれど少し大きめな、やる気なさげな顔の犬のぬいぐるみ。 ふわふわで手触りがとてもいい。 普段は仕事に行くのに使うのだから車内は1人。 殺風景で寂しいなぁ、と思い購入したのだった。 その後も、春の持っている鞄に似た赤色のクッションも増えた。 運転自体は好きではないが、車内を好きなものにしたことで、この空間が好きだった。 なので土日はいろんな場所に出かける。 遠出してショッピング。 ちょっとそこのスーパーまで。 それでも、春が運転する車が一番落ち着くなぁ、と思うのはいうまでもない。

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