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第124話
春side
郁の背中がいつもより小さく見える。
あの日、床に座る郁の光景が忘れられない。
もし思い出しているなら…
一番に、これからもそばに居ると伝えたい。
不安な気持ちも全て受け止めてあげるから。
「春?」
郁から声をかけられて我に返る。
「終わった?」
「うん。」
「おいで。」
手を広げて郁を招き寄せる。
俺が後ろから郁を抱きしめる形で座る。
「……は、はなしって?」
「…最近、なんかあった?」
「ううん?ないよ?」
「悩み事もないの?」
「うん。……あ、でも、…」
「ん?」
止まった郁に話を促す。
「ぁ…えっと……あの、ね?」
「うん。」
「学校、行けないかなって」
「学校?」
「うん。1日でも行けるかな?って考えてて。でも怖いなって思って」
「そっか。焦んなくてもいいよ?勉強は教えてあげれるし、考査は保健室で受けさせてもらえるから進級できるし。」
「う、うん。そう、なんだけどね」
「…本当は?……言ってごらん?」
「………春が、学校行ってることにうらやましいなって。」
「そんなこと?」
「そ、そんなことって!!」
「あ、ごめん。そういうつもりはなかった。」
「春と俊と真羽、みんなと過ごしたかった。」
そういって俯いた郁を、今度は正面からそっと抱きしめた。
「焦れば焦るほど、うまくいかなくなるよ?郁のペースでゆっくりやっていけばいい。俺はずっとそばで支えてあげるから。」
「うん」
郁は顔を隠すように、俺の胸に顔を埋めた。
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