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第134話

春side 「大丈夫?まだ手足痺れてる?」 「うん、痺れてる…手と足だけ寒い。」 さっきよりはマシにはなったが触れた手は冷たい。 「足は布団かけとくね」 「ありがとう、お母さん」 郁はそう言って笑ったが疲れ切った顔をしていた。 過呼吸になった後は、大体こういう感じクタクタになっている。 「郁、少し寝な?」 「ううん、いい」 「意地を張る必要ないよ?母さんはここにいてあげるから」 「…大丈夫」 「無理はしないこと、いい?」 「うん、わかってる」 郁の口調に若干の苛立ちが見える。 郁と変わってあげれたらいいのにと強く思う。 こうしていることが本当に郁の支えになっているのだろうか。 あいている片方の手で郁の頭を撫でる。 「…はる」 「ん?」 「ごめんなさい」 「なんで?郁は俺に謝るようなことしてないよ?」 郁は目を合わせようともせず、涙を流した。 「僕は弱い。春やお母さん、お父さんに迷惑ばかり。今だって……春、僕といたら春を悲しませちゃうから………だから、……あの、ね、……」 何を言いたいのかは何となくわかる。 だから郁の口を手で塞いだ。 「ストップ。それ以上は聞かない。俺は自分のためにならないことはしない。郁のそばに居ることは俺が決めたこと。悲しもうが喜ぼうが怒ろうが哀れだと思われたとしても、ずーっと郁のそばに居たいと思ったのは俺自身。だから、それ以上言わないで。」 言いたいことを言い終えて、そっと手を離した。 すると陽太さんがそっと郁の頭を撫でて、目元を手で覆った。 「今はなんにも考えなくていいから。このまま寝なさい。」 「…ぅん」 その返事は小さくて今にも消えそうだった。

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