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第137話
春side
長い沈黙の中で俺と陽太さんが見つめるのは言うまでもなく郁。
「……」
「…陽太さん、ちょっと食堂行ってきます。郁のことお願いします。すぐ戻ってくるんで。」
「あ、そっか。うん、行っておいで。」
「はい。」
立ち上がり歩き出したが途中で気になって振り返る。
陽太さんはそれを知っいたかのようにこちらを見て頷いてくれた。
「…行ってきます。」
そう返事をすれば、ふふっと陽太さんに笑われてしまった。
パタンとドアを閉じて深くふーっと息を吐く。
そして自分の頬を軽くパンッと叩く。
廊下にいる同級生から変な目で見られながら、今度は何も気にせず食堂へ向かう。
早足で階段を降りる。
食堂に着けば、ちらほら夕食を食べている人がいる。
それを横目に食堂のおばさんのもとへ行けば「はるくん、ちょいと待ってねぇ」と言われたので「はい」と微笑んで答えた。
「…はい、これね。今日は少し遅かったわね。何かあったの?」
「まぁ、いろいろと」
「無理しないことが一番よ!程よくストレス発散して笑うこと!これがはるくんにはいいと思うわ!!」
「ありがとうございます。」
「いえいえ!困ったことがあったらいつでも言ってね!あたしらは、みんなのお母さんみたいなものだから!」
「はい!」
先ほど陽太さんから励ましてもらい、続いて食堂のおばさんにまで元気をもらった。
俺、元気なさそうに見えるかな?なんて考えながら笑ってしまった。
「あ!春くん!!」
俺を呼ぶ声が聞こえる。
俺の笑顔は一瞬にして真顔へと変わった。
聞いてないふりをしてやり過ごしたいと思うが無理だろうな…
早く郁と陽太さんの待つ部屋へ戻りたい。
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