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第140話
郁side
春が声を抑えて泣く姿に胸がぐっと苦しくなった。
春は僕の泣く姿を何度も何度も見てる。
でも僕は春の泣く姿を片手で数えられるほどしか見ていない。だから春は強いんだと勝手に思っていた。
でもそれは違っていた。
強いわけじゃなくて、その気持ちを押し殺して、誰にも気づかれないように隠し通してただけなんだ。
僕は、僕のことだけで精一杯になって、周りなんか見る余裕すらなかった。
『これから、どうしようかな?
これ以上春に甘え続けることはできない。
春から離れよう。
僕は僕自身を許すことなんてできない。
だから…』
『春は何も悪くない。
僕が弱いから。
僕の身勝手で迷惑かけて。
僕のせいで苦しめて。
僕のせいで春を縛り付けて。
こんな僕を許さないで。
恨まれてもかまわない。
僕といたら、春も不幸にしてしまう。』
『春に幸福を…』
こんなことばかり考えて、周りに僕を支えてくれる人がいるのに。それすら気づけなかった。
それに春のことを考えているようで心の中まで見てなかった。
春の気持ちを無視して、僕は僕が満足のいくようにしか考えれてなかった。
ごめんね、春。
僕、逃げないから。
もう少しだけ待ってて。
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