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第144話
春Side
郁の笑顔。
それは、俺にとっての宝物。
朝、早く目が覚めた郁に起こされて、一番最初に「おはよ」って声とともに笑顔が見れた。
食堂まで俺の手を引く郁は、何かにワクワクしていて、少しだけ緊張も混じっていた。まるで文化祭前日に眠れないのと似たような感じだ。
食堂に入る直前、止まった郁。
何だか、これから試合を始める選手のような顔をしている。
そして、食堂のおばちゃんと楽しそうに会話をする。
真羽ともぴょんぴょん跳ねて喜ぶ。
起きてから夢でも見ているのだろうか、とでも言いたくなる光景に驚きつつ、嬉しさ半分、不思議度半分といったところ。
何が郁に変化をもたらしたのか、というのは分からない。
しかし、明るく前向きな郁を見ていると、懐かしい気持になる。
中学のとき、どんな問題にも前から突っ込んでいって壁にあたって、砕けることを覚悟の上で、またドーンと突っ込む。
そんなことを思い出したクスッと心の中で笑う。
やっと落ち着いて過ごせるのだと、少しだけ気持ちが緩んだ。
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