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第146話
春side
チャイムが鳴り、ホームルームの終わりを告げる。
「きりーつ……気を付けー…れーい…」
委員の声に促され、全員が立ち、“やっと今日が終わった。”というような緩い雰囲気が流れる。
「ありがとーございましたー」
のんびりとした挨拶が終わるとともに、俺は急いで教室を飛び出した。
真羽と俊には朝のうちに「先に帰るから」と伝えておいた。
寮へ向けてとにかく走る。
バンっと勢いよく部屋のドアを開ける。
「わっ…は、春、おかえり。びっくりした……」
無言のまま部屋に入り、郁を抱きしめる。
「ど、どうしたの?」
呼吸を整えて郁の顔を見つめた。
「…ううん。なんでもない」
「そう?」
「…ただいま」
「ふふ…おかえり」
制服をハンガーにかけて、部屋着に着替える。
「ご飯、どうする?」
「んー、食堂行く!お昼もおばちゃんのところに行ってご飯おすそ分けしてもらったんだ!」
「そっか。…良かった。」
「なんで?」
「ん?」
「よかったって」
「楽しそうだから。一人で寮にいるの暇かなって思ってたんだけど、そうでもなさそうだから。」
そう言ったとたんに、郁は頬を膨らませた。
その頬を両手で包み込めば、俺の手に郁の手を重ねてくる。
「…春が、いないのに寂しいに決まってるでしょ!?だから……」
顔を赤くして、それを隠すようにうつむく。
「ふっ…かわいっ」
わざと耳元で呟けば、体を震わせる。
ゆっくりと顔を上げ「……もぅ…」と目を潤ませながら言う。
その姿がかわいくて、思わず抱きしめる。
「く、くるしぃよー…はるー」
「あ、ごめん」
「春だから許す!」
「なにそれ。」
そしてお互いに目を合わせて笑いあった。
心がほっとするようにあたたかい。
郁が笑顔だからかな。
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