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第147話
郁side
春がバタバタと帰ってきて、僕のために走ってくれたんだと思ったら嬉しくて顔が緩んだ。
今日は春に数学を教えてもらう約束をしてた。
「勉強する?」
「うん!」
「じゃあやろっか。」
そして春は学校用のカバンをガサガサと漁った。
「…あー、ごめん郁」
「どうしたの?」
「教室にファイルとノート忘れてきたっぽい…取りに行ってくるから、待ってて。」
そういって、春はもう一度、制服に着替え始めた。
部屋着のまま行くわけにはいかないので、仕方なくといったかんじがする。
「………ねぇ、春?」
「んー?」
「僕も行っていい?」
春は無言で僕をじっと見つめて固まった。
「春?」
はっとしたように頭を振って、うーんと考えていた。
やっぱり迷惑だったかな…
放課後だし、多少人は減ったから大丈夫かなって。
「…ごめん。無理だよね。」
「ううん、行こう!」
「だよね…え?」
「ん?いくんでしょ?」
春から許してもらえると思わなくて驚いた。
「ほら、郁も着替えて?」
そう言って、備え付けのクローゼットから僕の制服を取り出した。
「あ、うん」
先に着替え終わった春はじーっと僕を見てくる。
「な、なに?」
「ううん。久々に見たような気がするから」
春がそういうのも無理はない。
たまーにみんなの授業中に学校に行って、いわゆる保健室登校で、小テストを受けてすぐに帰る。
なので、みんなと会うこともないし、制服姿を春が見ることもない。
「そういえば、そうかも」
「ね、写真撮ろ。」
「えー?」
春はスマホで内カメラに設定して、僕に顔を寄せる。
「あ、かわいい」
画面にはうさみみと鼻、ひげを付けた僕たちがいた。
「でしょ。郁と撮ってみたかったんだよね」
そういった春は、カシャと画面上のボタンを押した。
「うん、すごいかわいい」
ストレートに言われて照れてしまう。
「…よし、、行こ」
「うん」
春の後ろを追いかけた。
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