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第148話

春side 慌てていたからといって、学校に忘れ物するとは思わなかった。 最悪だ…って思ったけど、郁が付いてきてくれるって言ったことに驚いた。 まぁでも、放課後だし少し時間が経ってるから、部活で残ってる人ぐらいだろう。 寮を出て、郁の歩幅に合わせて、手を引いて歩く。 こうして歩くのは久しぶりな気がする。 いつも真羽と俊も一緒にこうして歩いた。 懐かしい… 「…春。」 郁の声掛けにより現実に引き戻される。 「…ん?」 「考え事?」 「ううん。何でもない。」 「そ…っか。」 あっという間に学校に着く。 そして、校門前で一度足を止めた。 「行くよ?」 「うん。大丈夫」 郁はぎゅっと俺の手をさらに握りしめた。 「…よし、行こ」 なんだか、体に変な力が入っている。 郁がそばにいることで、緊張している。 もしもの時、体調の変化とか、いち早く気づいてあげたい。 「ねえ、春?」 「ん?なんかあった?」 「えっと…どこ通って、教室まで行く・」 「あぁ…じゃあ、人少ないところ通るかな…」 「うん…ごめんね」 「いいよ、謝らなくて。距離も変わらないし。」 そういったところで、クラスメイトの杉田が階段を駆け下りてきた。 「…!?……室井と冬城じゃん。」 「これから部活にしては少し遅くない?」 部活着だったので、そう聞けば杉田は苦笑いをした。 「あー、数学のプリントさ、提出し忘れてて。部室行ってから気が付いたんだよー」 「あぁ、そういうことね。」 「そそ。…冬城、久々だな。元気?」 その問いかけに郁は、一瞬体を強張らせた。 たぶん突然話しかけられると思ってなかったからだろう。 「……元気でやってるよ」 「そっか。良かった。体調崩してから見かけなかったからさ、みんな心配してたんだ。」 「ごめんね。僕は大丈夫。もう少ししたら、前みたいにみんなと授業受けたりする予定!」 「お!じゃあ、みんなと待ってるから!!無理だけはすんなよ?」 「うん!ありがとう」 「じゃ!俺は戻るわ。」 「部活がんばー」 「ほーい」 手を振りながら去っていく杉田に郁も手を振り返した。

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