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第4話
「まさかキスの仕方知らないなんて・・・・・・思わなかったから」
うるせぇ・・・・・・
ぐったりとベッドに寝かされている俺の隣で、誰の許可を得て紅刃も同じように寝てるんだ!
俺のベッドなんだぞ!
降りろぉ!
蹴り飛ばしたいのにぃ・・・・・・身体がだるくって、重くって、力が入らなくって。
「あぁいう時は、鼻で息すればいいんだぞ?」
だから、うるせぇって!
知っとるわ、そんくらい!
いつまでも笑ってんじゃねぇよ。
いきなりだったから、出来なかっただけだもん!
「まさかの酸欠って・・・・・・ちょっと焦っちまった」
なんだよ、その呆れた眼差しはぁ!
「お・・・・・・俺だって、キスくらいはぁ・・・・・・」
したこと・・・・・・いや、まぁ、今まで、あんなのしたことなかったけど・・・・・・
ちょん、ぐらいは・・・・・・いや、ないか?
だって俺のファーストキスは・・・・・・・・
「ひょっとして、屋上でしたキスって、ファーストだったりした?」
あ・・・・・・失敗した。
反応したら、そうだって肯定したも同然じゃねぇか!
くっそぉ・・・・・・ムカつくぅ!
「・・・・・・悪ぃのかよ」
どうせ、俺はお前みたいに経験豊富じゃないよ!
体に力が入れば、このクッションを思いっきり紅刃に向かって投げ付けてやるのにぃ!
「ラッキー」
嬉しそうに笑うな!
俺は怒ってるんだからな!
っていうか、いつまでいるんだよ!
さっさと帰れ!
「やっぱり天城は俺のもんになるべきだ」
は?
「なんっ!」
どういう意味?
「?」
なんだよ?
なんで、そんな不思議そうな顔すんの?
「・・・・・・天城、まさかとは思うけど・・・・・・俺のこと分かってない?」
は?
分かってないってなんだ?
「編入生の獅童紅刃・・・・・・先輩だろ?」
一つ学年が上のイケメン編入生、獅童紅刃。
名前くらいしかしらないけど。
いや、性格の悪さは知った。
「そうじゃなくって・・・・・・うそ、マジか?」
ぐしゃぐしゃと俺の髪を掻き乱して・・・・・・っつうか!
「やめろ!」
髪で遊ぶな!
「どっかに頭打ち付けて俺のこと忘れたってことか?」
後頭部を撫でるな!
頭なんか打ってないし、あんたのことは最初から知らない!
人違いだ!
いや、人違いでファーストキスを奪われた俺って・・・・・・可哀想だ!
「天城」
「痛ぇって!」
ベッドに両肩を押し付けられて、また馬乗りに覆いかぶさってきて・・・・・・
じっと俺の顔・・・・・・見て・・・・・・くっそぉ、本当にイケメンだな、こいつ。
顔だけはいいんだから・・・・・・顔だけは!
いけ好かないヤツでも、こんなにイケメンだと、そのままじっと見詰められてたら・・・・・・
「あ、赤くなった」
そうなるだろうがぁ!
なんか、情けなくて、じわっと涙が浮かんできた。
「天城」
また顔が近づいてきて・・・・・・
さっきのを、またされるのかもと思ってギュッと目を瞑って、全身が硬直した。
ちゅって・・・・・・
今度は触れるだけのキスを目尻にされた。
「思い出せよ、俺のこと」
なん、なんだよ・・・・・・なんで、そんな寂しそうな顔すんだよ?
俺が悪いことしてるみてぇじゃん。
「明後日のパーティー、天城も行くんだよな?」
は?
パーティーってなんの?
「その時までに、俺のこと思い出しておいて」
漸く紅刃が俺を解放してくれた。
「今日のところは帰るから」
名残惜しそうに俺の髪に触れたまま・・・・・・
その毛先に口付けをして・・・・・・
「また明日、学校でな」
ヒラヒラと手を振って、紅刃が部屋を出て行った。
あっけなく・・・・・・
パタンッと扉が閉まる。
また、明日・・・・・・って!
明日も会うんじゃん!
ぼふんっと近くのクッションを取って、扉に向かって投げ付けた。
それは扉には届かなかったけれど・・・・・・
くれは・・・・・・クレハ・・・・・・・・・紅刃。
俺、前に会ったことあんのか?
あいつの口ぶりじゃ、そんな感じみたいだけど・・・・・・
じっと天井を睨みつけても・・・・・・
すぐに紅刃の顔が浮かんできたから、焦って寝返りを打った。
枕に顔を押し当てて、低く唸る。
いったい何処で会ったってんだ?
いつ?
何処で?
ぐるぐる紅刃のこと考えていたら・・・・・・
また、いつの間にか寝てしまっていたようで・・・・・・
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