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第10話

迎えに来たリムジンに乗り込んで、豪雨の中、うちより大きな屋敷に到着。 「天城」 受付を済ませ、会場に踏み込んですぐに、今回のパーティーの主催者である息子が・・・・・・ 「翡翠さん」 「よく来たね」 純白の衣装に身を包んだ婚約者のΩと一緒に近づいてきた。 ヴェールでその表情は見えないけど、って思ってたら、翡翠さんの手がヴェールに触れた。 この街で彼らに逆らったら生きていけないとまで言われる一族、鬼龍院グループの次期総帥候補、翡翠さん。 婚約者のΩ、琥珀さん。 このお二人は、『運命の番』ではなかったらしいけど、翡翠さんの番の人が事故死され、琥珀さんのお相手は病死。 お二人は幼い頃に出会い、お互いが一目惚れどうしだったらしいけど・・・・・・ それぞれ違う『運命の番』の相手が存在していたが、お互い相手に先立たれてしまい・・・・・・・・・ 父さんの研究所が開発した薬で、お互いの番関係を解消し、新たにお二人が『運命の番』として結ばれた第一成功例。 「この度は、おめでとうございます」 綺麗な人だなぁ・・・・・・幸せそうだ。 番の証であるΩのチョーカーの宝石と、αの左の中指に嵌められた宝石が・・・・・・お揃いの色だ。 琥珀さんと翡翠さんの左の薬指には同じ銀細工の指輪が嵌められている。 番の証であるチョーカーと指輪以外にお揃いのモノを身に着けるのは珍しいと言われているけど・・・・・・ 「ありがとう。来てくれて嬉しいよ。おじさんは残念だけど、ゆっくり楽しんで行ってくれ・・・・・・琥珀」 「はい・・・・・・失礼します」 他にも挨拶しに行かなきゃならないから大変だなぁ。 琥珀さん、幸せそう・・・・・・良かった。 父さんもちゃんと仕事してるんだな。 「じゃぁ、また後で」 早々に次の人へと向かっていく彼の背中を見送って、俺は黄馬と共に会場をぐるりと見回した。 思ったよりαの人数が少なくて、Ωの方が多い気がする。 着飾ったΩが何人か・・・・・・ まるでお見合いパーティーみたいに・・・・・・・・・一人のαに対してΩが群がってる。 俺は他の参加者の邪魔にならないように、壁際に寄って・・・・・・ ま、適当に飲んで、食って・・・・・・ある程度の時間が経ったら帰ろう。 「僕、なんか取ってくるね」 おい、こら、黄馬・・・・・・お前、俺を守るとか言っておいて・・・・・・ 目をキラッキラ輝かせて、俺を1人にさせて食いモンのところに走って行くのか! 近づいてきた給仕係のトレイから、ノンアルコールのドリンクを受け取って、壁に凭れた。 一体、何人の人がお祝いに来てるんだろう・・・・・・ テレビで見るような有名人も何人かいるみたいだなぁ・・・・・・ 「鷹宮くん、何壁の花やってるの?」 いきなり知った顔が現れて・・・・・・ うぎゃって、思わず出そうになった悲鳴を飲み込んで、持っていたグラスが大きく揺れた。 そのせいで袖口はベタベタ・・・・・・ 慌てて駆けつけてきた給仕係に拭く物を渡された。 「し、白峰咲良?」 どうしてココに? 一年後輩の・・・・・・スラム街で彷徨っていたところを、父さんが働いてる研究所の職員に保護された・・・・・・Ω。 研究所が管理している学生寮と学校以外、出歩くのは制限されてるんじゃなかったか? 番として迎えてくれるαが現れない限り、研究所の保護下に置かれているはず。 「昨日今日と学校で見なかったから心配したんだよ?」 心配? 俺達、そんなに親しい間柄じゃないよな? いくらΩ同士って言ったって、いつも俺の事避けてたじゃん。 俺は・・・・・・明らかに特別扱いされてたから。 あんた達が向けてくる視線の意味が、解らないほど鈍感じゃない。 白峰咲良の名前を知ってたのだって・・・・・・偶然近くを通りがかった時に名前を呼ばれてたから知っただけ。 今までこんな風に、二人で話したことなんか、ないよな? 「編入生の先輩に鷹宮くんのことを聞かれた後くらいから全然見かけなくなったから気になっちゃって」 編入生の先輩って・・・・・・獅童紅刃のことか? 「・・・・・・・・・し、白峰はどうしてココに?」 「天城」 全然気付かなかった。 こんな近くまで来てたなんて・・・・・・ 「話が、あるんだ・・・・・・一緒に来てくれないか?」 紅刃? どうしてココにいるんだ? 俺には、お前と話すことなんて何もない。 お前だって・・・・・・もう俺なんかに用はないだろ? 俺は天音じゃない。 「鷹宮くん?」 隣に立った人間と目を合わせないようにしている俺の顔を、白峰が覗き込む。 「俺にはない」 「俺にはある・・・・・・・来て」 強引に腕を引っ張られて・・・・・・

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