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第11話

「ちょっ!」 強く掴まれた腕を振り払うことも出来ずに、会場から連れ出された。 「離せよ!」 俺の声が届いているはずなのに、完全に無視されてる! 紅刃の指、ビクともしねぇ! ロビーを抜けて・・・・・・エレベーターに押し込まれた。 漸く解放された手首を擦り、閉まりそうなドアから脱出を試みる。 「天城」 失敗した。 紅刃の背後で完全にドアが閉まってしまった。 退路は塞がれた。 「なんだよ!俺にもう用はないだろっ!」 お前が用あるのは天音なんだから! なんで俺に構うんだ・・・・・ 「ごめん」 なんで? 何が起こってるんだ? どうして紅刃は俺の事を抱き締めてるんだ? 「ごめんな、天城」 なんで涙が出てくるんだ? 俺、何が・・・・・・なんだか、ワケ解らねぇ・・・・・・胸が締め付けられてるみたいで苦しい。 頭の中がぐちゃぐちゃだ。 「ちゃんと順を追って話したいから・・・・・・逃げないで」 逃げ・・・・・・? ガクンッと足元が揺れて、紅刃の肩越しにエレベーターのドアが左右に開くのが見えた。 紅刃の指が、俺の涙を拭い取ってくれて・・・・・・ 俺は、紅刃に手を引かれるまま、廊下を歩いた。 シンッと静まり返った廊下に、俺と紅刃の足音だけが響いてる。 紅刃が1つの部屋の扉を開けて・・・・・・その中に足を踏み入れた。 ガチャリと背後で鍵が落とされた音を聞いた。 紅刃に引っ張られて奥へ進む。 窓から見える景色は、相変わらず、どんより分厚い雲が覆っていて、雨がまだ激しく降っていた。 「座って」 窓際のソファに誘導されて、ストンッと腰を落とす。 「えっと、あの、まず・・・・・・あの手紙なんだけど」 手紙? あぁ、天音との番の誓いってヤツ? 天音にとっても、俺なんていなきゃ良かった存在だったんだって教えてくれた手紙・・・・・・・ 「あれ・・・・・・偽造なんだ」 へぇ・・・・・・ぎ・・・・・・・・・・・・ぞ、う? 「へ?」 俺、今どんな顔したんだろう? きっと、まぬけな顔してんだろうなぁ。 何言ってんだ? 「天城がアレを信じてくれたら、もっとスムーズに事が進むって思ったんだけど・・・・・・まさか、双子の兄貴がいたなんて」 どういう意味? 「俺、知らなくて」 紅刃が目の前でガックリと肩を落とすけど・・・・・・俺には何がなんだか? 話が見えない。 お前、順を追って話すって言ったじゃないか? 混乱中の俺に気付け、紅刃。 「えっと・・・・・・つまり、俺と天城が同じ保育園にいたっていうのは嘘なんだ」 解ってる、俺は保育園に行ってない。 保育園に行ってたのは兄、天音の方なんだから。 紅刃、どうして顔を真っ赤にしてるんだ? 今の話の中に照れるようなことはあったか? 「・・・・・・れっ・・・・・・・・・したんだ」 はい? 聞き返そうとしたら、いきなり胸倉を掴まれ、強く引き寄せられ・・・・・・ 「んぐっ!」 てめぇ!また!!! 今の話の流れで、どうしてキスなんだっ! 「はっなせっ!!」 ぐっと紅刃の肩を足で押して、距離を取る。 いきなりキスって、何考えてんだぁ! ぐいっと袖口で唇を拭った。 「一目惚れしたんだよ、あん時」 え? 「なんだよ、悪ぃかよ!」 逆ギレ? ってか、あん時って? 「こっちは、天城に一度告白して玉砕してんだ!なりふり構ってられねぇんだ!」 へ? 俺、告白されたことあったっけ? ・・・・・・で、玉砕ってことは、俺、フッたのか? 俺達いつ出会ってたんだ? まったく覚えてないんだけど? 「天城が言ったんだぞ?男磨いて出直して来いって」 男を・・・・・・磨く? 「俺、いい男になったろ?」 自分で言うか? 「何人もの女やΩに告られるくらいイケメンになったろ?」 今のは、ちょっとした自慢か? 「なのに、天城はちっとも俺に・・・・・・・・・・・だからちょっと卑怯な手も使ってみたわけで」 卑怯な手が・・・・・・あの偽造した手紙? 「じゃぁ・・・・・・更にヒント」 焦れたのか、紅刃がピッと人差し指を立てた。 ヒントって・・・・・・突然クイズか? 「俺と天城が最初に会ったのは、俺達が小学生の時・・・・・・天城が泣いてた時に声を掛けたんだ」 泣いてた? 小学生の時? それって・・・・・・母さんと天音が死んだ頃?

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