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第15話

どこまでも・・・・・・・・・深く、暗い、暗い・・・・・・ とても静かな空間で・・・・・・・・・ 冷たい風が何処からともなく吹いてきて、身体を吹き抜けて行った。 「黄馬」 この声に応える声も、抱き締めてくれる腕も現れない。 「黄馬・・・・・・寒い」 何処にいるんだ? 寒いんだよ、黄馬・・・・・・ 膝を抱えて丸まる。 ここに黄馬はいないんだ・・・・・・ 父さんもいない・・・・・・ 誰もいない・・・・・・・・・ 俺は独り・・・・・・ そうだ、俺は独り・・・・・・天音がいなくなってから、俺は独りでいなきゃいけなかったんだ。 天音のものを、俺が望んじゃいけない。 俺のものなんて、最初から何もなかったんだから。 天音だけが・・・・・・・天音だけが、俺の、たった一つの・・・・・・・・・ 「天城」 誰? 今の声は誰の? 俺の事を呼ぶ人なんて・・・・・・・・・ 「天城」 俺の名前なんて呼んじゃダメだ・・・・・・ 「天城」 呼ぶな。 「天城」 ふわっと身体が持ち上げられた感じがした。 吹いていた冷たい風が、少しだけ暖かくなったような気がする。 「天城」 周囲を取り巻いていた闇が薄くなっていく。 「天城・・・・・・泣かなくていい」 誰かが頬に触れた。 俺は・・・・・・その手を知っている? 「天城、俺が側にいてやるから」 名前を呼ぶ声は・・・・・・俺は知ってる。 「天城、泣くな」 真っ白な光が溢れてくる。 身体が浮かび上がって行く。 「天城」 ふはっ、と息を吐いた。 大きく息を吸って、ゆっくりと目を開ける。 「天城?」 なんで驚いた顔してるんだ? 身体を起こそうとして、腕に力を入れたつもりだけど・・・・・・ 「・・・・・・ンっ」 なぜか上手く力が伝わらなくて、腕が震えて・・・・・・ 「あ、天城・・・・・・急に起きるな。あの薬、天城に合わなかったみたいだから・・・・・・」 は? 薬って、何のことだ? 「まさか、まる二日も眠ったままになるなんて思ってなくて」 二日? 眠ってたって? っつうか、ココは何処? 病院の個室? 真っ白な壁に、真っ白な天井に・・・・・真っ白なカーテンが靡いていて・・・・・・ 「とにかく、先生呼んでくるから待ってて」 バタバタと慌ただしく出て行ったのは・・・・・・獅童紅刃、だよな? え? 「・・・・・・ここ、何処?」 自分の声が、すっごく掠れてて驚いた。 喉の奥が引き攣ってる。 軽い咳払いを何回かして、小さく発声練習してみたりして・・・・・・ なんとか腕に力が入って、上体を起こせた。 どっかの病院の個室・・・・・・いや、病院っていうより、研究所の一室って感じか? 父さんの研究所でも見たことがあるような機材が壁側に並んでおいてある。 腕には点滴の針が刺さったまま・・・・・・それは、ぶちっと勢いよく抜いてみた。 「痛っ」 ゆっくり抜き取ればよかったと、ちょっと後悔。 俺が着ているのって検査着? ぺたっと裸足の足を床に着けて、ゆっくりと体重を掛けていく。 力が入るのを確認して、そっとベッドから離れた。 ふらふらした足取りで、開いている窓に近づいて、外を・・・・・・・・・ 「は?」 視界には見たことのない世界が広がっていた。

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