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第16話

見たことのない高いビル、鉄塔・・・・・・どっちを見ても知らない風景ばかりで・・・・・・・・・ 一際異彩を放つのが漆黒の城。 あの城は見たことがある・・・・・・ 通称『闇城』って言って、この国で一番偉い人が住んでるんだよな? でも、俺のいた街からは見えなかったはず。 「急に動くと倒れますよ?」 初めて聞いた声だった。 先程紅刃が出て行った扉が開いていて、そこに・・・・・・白衣を着た、見知らぬ長髪の男が立っていた。 「我々は、この国の国王直属の特殊機関『牙』・・・・・・我々が君を保護しました」 保護? 教科書に載ってるから名前くらいは知ってるけど・・・・・・何をする機関なのかは知らない。 部隊は全部で十三あって・・・・・・え? ちょっと待って、意味解んない。 俺なんで『牙』に保護されてんの? 「我々第七部隊は、君がいた街の件で動いています。もちろん協力してくださいますね?」 俺がいた街? 協力って、俺に何をしろって言うんだ? 「待て紫龍・・・・・・天城が混乱してる」 また別の人物が入口に現われた。 こっちの人は・・・・・・・・・なんとなく、紅刃に似てる気もするけど? 紫龍って呼んだ人の腕を引っ張って退け、自身はゆっくりと近づいてきた。 危険、な感じはしないけど・・・・・・なんか妙な感じがする。 胸がザワザワする。 なんだろう? 落ち着かない。 「獅童火爪だ・・・・・・天城、とりあえず座ろう?」 し、ど・・・・・・う・・・ほつ、ま? 「・・・・・・・・・・さっきまで一緒にいた紅刃の兄」 赤に近い茶髪で・・・・・・紅刃より、ちょっと背が高いかな? 紅刃とは、目元が似てる、か。 「・・・・・・あとは、天城がもう少し落ち着いてからにするよ」 窓際から動けなかった俺の腕を優しく取って、引っ張られた。 そのまま、膝の裏に手を入れられて、あっという間に・・・・・・姫抱きされてしまった。 けど、嫌な気はしなくて・・・・・・・・・ 俺はそのまま、大人しくベッドの上に連行された。 「自分で点滴抜いちゃったんだな・・・・・・血が滲んでる」 ぺろっと腕を舐められて、ボッと顔が熱くなった。 紅刃と似てイケメンで・・・・・・俺、イケメンの免疫ないんだな。 顔が熱い。 「天城、あまり無茶をするなよ?」 くしゃっと髪を撫でてくれて・・・・・・額にそっとキスを落としてくれた。 この人、どうして俺に優しくするんだ? 初対面・・・・・・だよな? 「・・・・・・・・参ったな。やっぱり、紅刃にも渡したくない」 え? 視界いっぱい、すぐ近くに顔が迫って来て・・・・・・・・・唇が触れそうで・・・・・・・・・ このままじゃぁ・・・・・・キス、しそう・・・・・・・で。 でも直前にスッと逸れて、頬が触れ合ったかと思ったら・・・・・・ 「天城、やっと会えて嬉しいよ」 そう囁かれて・・・・・・・・・ ゾクッと震え、無意識にこの人の袖口を掴んだみたいだ。 なぜかポロッと涙が一筋頬を伝って・・・・・・ 「天城、泣かなくていい」 この人の指が俺の涙を拭ってくれて・・・・・・でも俺、どうして涙が溢れて来るんだ? 「俺が側にいてやるから」 その言葉が、なぜかすごく俺を安心させてくれて。 でも涙は止まらなくて・・・・・・・ コホンッと咳払いが聞こえた。 「火爪、僕はリーダーに彼の目が覚めたことを報告に行くので、ちゃんと説明しておいてくださいね」 あ、他に人がいたんだった。 国王直属の特殊機関『牙』の隊員だったっけ? ってことは、この人、火爪・・・・・・さん、も? バサッと白衣の裾を翻して、紫龍さんが部屋を出て行く。 この部屋には二人っきり。 そんなことを意識したら、なんだか鼓動が早くなってきた。

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