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第18話
ココにいる紅刃や火爪さんには・・・・・・見せちゃいけない。
「天城、どうした?」
紅刃は不思議そうにしてるけど、火爪さんは俺の行動を気にした様子は・・・・・・ない?
「天城がココへ運ばれた時に俺は見てる・・・・・・あれから熱は下がってるから大丈夫だ」
火爪さんがジッと見詰めてくる。
俺の背中を・・・・・・・・・・・・見た、と言う。
気持ち悪くなかったんだろうか?
火爪さんの目は・・・・・・変わらずに優しい。
「何見たんだよ、兄貴・・・・・・天城の背中に何が?」
「紅刃、お前ちょっと部屋から出てろ」
「は?なんで俺だけ?兄貴はいいのかよ!」
熊男に言われて少しだけ抵抗して見せたものの、俺が嫌がっているからと渋々部屋の入り口に向かう。
が、ここに火爪さんも残っているため、紅刃の足はなかなか廊下へ踏み出さない。
「天城が紅刃に見られたくないって言ってんだぞ?」
「兄貴は見たくせに!」
呆れ顔の火爪さんに言われ、紅刃が噛みつく。
「俺の場合は不可抗力だ」
紅刃の姿が部屋の外に出て、見えなくなると、熊男の手が再びシャツを掴んだ。
熊男の身体が盾になって、仮に紅刃が部屋を覗いても俺の姿は見えないだろう。
「捲るぞ?」
俺は火爪さんに抱きついている形で、ギュッと目を閉じた。
無意識に息も止めてた。
熊男の太い指が背中を滑ってる。
火爪さんのシャツを握り締めてた手に力を込める。
「天城、大丈夫だ・・・・・・何もない、綺麗な背中だ」
耳元で火爪さんが教えてくれた。
昔鏡で一回だけ見た。
俺の背中には・・・・・・・・・身体が熱を帯びると折り畳んだような翼が浮かび上がる。
それは産まれた時から、成長と共に翼も大きくなって、背中一面に。
でも、双子の兄、天音に翼はなかった。
父さんがいろいろ調べてくれたけど、原因は不明。
ただ、身体が熱くなると背中に翼が浮かび上がって、体温が下がれば消えるんだ。
鏡で見たソレは、不気味に赤黒く光を放っているように見えて・・・・・・恐くて・・・・・・・・・
まるで何かの呪いみたいで、大切な人に触らせちゃいけないもので・・・・・・・
天音にだって一度も触らせたことはなかった。
小さい頃から一緒な黄馬だって知らない。
この背中の翼を知っていたのは両親と、鈴江さん・・・・・・くらいかな?
背中に翼が浮かび上がってないって聞いて安心した俺は、そっと火爪さんから身体を離した。
「・・・・・・あの、すみませんでした」
「謝ることはないよ、天城。これは俺の役得ってやつだから・・・・・・ずっとくっついていてくれても構わない」
ニッと口角を吊り上げた火爪さんに、プッと吹き出してしまった。
こういう冗談言うんだな。
「もういいですかぁ?」
ひょっこりと紅刃が部屋の中を覗き込んだのが熊男の肩越しに見えた。
くしゃりと熊男の大きな手が俺の頭を撫でて、くるっと身体の向きを変えた。
「大人しくしてられるなら入れ」
大人しくって・・・・・・ちっちゃなガキじゃないんだから、なんて思ったのに。
ムゥッと唇と尖らせ、不貞腐れた表情で部屋に入って来た紅刃はまさに・・・・・・・・・
「ガキ」
「くはっ・・・あはははははっ」
俺が思ったことを火爪さんが代弁してくれて、俺はとうとう声を上げて笑ってしまった。
「ちょっ、天城ぃ?」
笑いを堪えようとしたけど、涙まで出てきた・・・・・・自分でも分からない、何処かのツボに入ったかな?
火爪さんの腕の中で、安心している俺がいる。
こんなに笑うの、久しぶりだなぁ。
「まぁ、特に異常は見られないから、火爪、アイツには・・・・・・・」
「今紫龍が報告に行ってま」
二日間も寝たままだった俺の腹が啼く。
部屋の中がシンと静まり返り、俺の笑いも恥ずかしさで止まった。
熊男の手がぐしゃぐしゃと、さっきより強く俺の頭を撫でる。
ちょっと痛いくらいだ。
「よしよし、何か腹に入れるもんを用意してきてやる」
ひらひらと背中越しに手を振って熊男が部屋から出て行った。
部屋には俺と火爪さん、紅刃の三人だけ。
「あの人は?」
「一応、あぁ見えて医者だよ。腕はいいから安心していい」
「αの中でも変わり者で有名なんだ」
あんなαもいるんだなぁ。
今まで俺の周りにはいなかったタイプのαだ。
「で、兄貴と天城はいつまでくっついてんの?」
さっきとは違って、俺達を無理矢理引き剥そうとはせず、紅刃は腰に両手を当てて仁王立ちしてる。
「天城の手がず~っと俺のシャツを掴んでいてな」
ず~っと、を強調した火爪さん。
え?
ぼんって顔が真っ赤になったと思う。
俺は慌てて握っていたシャツを離した。
「あ・・・・・・残念」
あの、耳元で本当に残念そうな声を出さないでください。
なんか・・・・・・俺も名残惜しい・・・・・・いやいやいやいや!
「じゃぁ、ご飯が来るまで間いろいろ説明しておこうか」
ごはん・・・・・・
その単語を聞いた俺の腹がまた啼いた。
火爪さんにくすっと笑われて・・・・・・紅刃はこっちから顔を背けて笑ってる。
隠してるつもりかもしれないけど、肩が震えてるんだよ。
お前が笑ってるのはお見通しだ!
「すいません・・・・・・お願いします」
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