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第20話

事故の後は、暫くの間、潜り込んだ研究員とも、白峰とも連絡が取れなくなったそうで、最悪、正体がバレて処分されてしまったんじゃないかと危惧していたそうだ。 再び鈴江さんから連絡が入ったのは、母さん達の葬式が終わってから約半年後のことだった。 更に、白峰からも連絡が入り、無事を確認、潜入捜査は続行されて・・・・・・ でも、俺達が街の外へ出ようとした、いや、逃げようとしたことで街全体の警備態勢が厳しくなって・・・・・・ 特に研究所は厳戒態勢。 出入りする研究員、業者他、一人ひとり、一社一社念入りに調査し直され・・・・・・ 定期的な連絡は入れられず、仲間を追加投入することも難しく・・・・・・ 一度、抜き打ちで国の専門調査機関が研究所に入ったが、人の命を奪ってしまうような危険な薬を精製している証拠を見付けることは出来なかった。 その薬の流通も暫く動きが無くなったらしい。 ただ、市場には例の薬を真似た、質の悪い薬が出回り始め、更に被害は拡大していった。 「今回、天城をあの街から連れ出したのは・・・・・・鈴江さんから連絡が来たからなんだ」 鈴江さんが? 「俺達の調査対象に鬼龍院グループも入っていてね・・・・・・鷹宮氏が近々、彼らに息子を差し出すようだという情報が入って」 あの時、紅刃が言っていたこと? 翡翠さんと琥珀さんの婚約パーティ・・・・・・翡翠さんに俺を差し出すために連れて来たって・・・・・・・・? 「咲良の正体もバレそうだったし、学校の方に潜入出来てた俺にも調査の手が入る直前だった」 黄馬がいたのは予定外だったらしい。 息子に何が起こり、今どんな状態なのか、その詳細は俺が眠っている間に鈴江さんへ連絡を入れたそうだ。 だが、運悪く鈴江さんとは連絡が取れなかったらしい。 俺達がいなくなったことでバタバタしてるんだろうか。 父さんは俺の事心配して・・・・・・・る、わけはないか。 「今の所、俺達が教えられる情報はそれくらいだ。で、兄貴、その場所・・・・・・」 「しない」 教えられるってことは、知っていること全部じゃないってことだよな? ぐぅぅうぅうぅうううぅうぅぅぅぅぅ!!! 自分の腹が啼く音が大きすぎて、思わず肩がビクッと跳ねた。 「天城・・・・・・マジか」 紅刃が呆れ顔・・・・・・火爪さんはクスッて笑ってベッドから立ち上がった。 「あの人、随分天城のことを気に入ったみたいだから、手の込んだもん作ってそうだな」 あの人って、さっきまでいた熊男のこと? 何か腹に入れるもん作って来てくれるって言って・・・・・・ ぽんぽんっと頭の中に食いモンが浮かぶと、今度は控えめに腹が啼いた。 くしゃっと俺の髪を撫でて、火爪さんが離れていく。 ここぞとばかりに紅刃が隣に座った。 火爪さんは開けっ放しの扉から廊下を覗いて、振り返って小さく息を吐く。 紅刃が俺の隣でドヤ顔してる。 「ガキ」 火爪さん、俺もそう思います。 そのままツカツカと戻って来て、紅刃とは逆サイドに腰を下ろす。 「は?」 「なんだ?」 「なんで兄貴がソコに座るんだよ!」 「空いてたから」 俺を挟んで兄弟喧嘩はやめてもらえないかな? まぁ、火爪さんは相手にしてないみたいだけど・・・・・・ でも、なんか羨ましいな・・・・・・・・・天音とは喧嘩したことなかったし。 「君が鷹宮天城くん?」 「え?俺?」 突然聞こえた第三者の声にきょろっと周囲を見回す。 紅刃も火爪さんにも聞こえたようで、俺と同じように部屋の中を見回してる。 「何処見てんだよ?」 下から声が聞こえた? ガシッと足首を掴まれて、声なき悲鳴を上げ、思わず火爪さんに抱きついた。 だって、何かが足を掴んでる! 普通ベッドの下って誰もいないだろ? 普通の人間はベッドの下に何かいないだろ? え? じゃぁ、何?何が俺の足掴んでるの? 人間じゃないんだよな? え?人間じゃない? 人間じゃ・・・・・・・・・なかったらナニ? 「天城、大丈夫だ」 「・・・・・・あ、ま・・・・・・・・・ぎ、なんで兄貴なわけ?」 涙目になってる俺を火爪さんが優しく抱き締めてくれる。 でも、足首を掴んでる手はまだ離れない。

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