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第22話

「君は我々『牙』の保護対象です・・・・・常に我々の監視下に置かれます。君が住んでいた街に帰してあげることは、現時点では許可できません」 家に帰れない、のは何となく解ってるけど・・・・・・ 父さんはなんて思ったんだろう? 紅刃は・・・・・・父さんが翡翠さんに俺を差し出すためにパーティへ行かせたとか意味解らないこと言ってたけど。 翡翠さんには琥珀さんがいるんだ。 あんなに・・・・・・琥珀さんは翡翠さんに一途って感じがヒシヒシと伝わって来たし、翡翠さんだって琥珀さんを見詰める目はすっごく優しくって、唯一無二の存在って、あぁいうのを言うと思う。 いくら、ハーレム法?だっけ?そんなのが制定されたって言ったって、あの2人の間に誰かが割り込めるわけない。 翡翠さんが琥珀さん以外を受け入れるわけない。 たとえ、その繋がりが『運命の番』でなくても・・・・・・・・・ 父さんに・・・・・・その答えを聞いてみたいけど、でも聞くのは・・・・・・怖い。 お前はいらないから、さっさと他人に渡してしまおうと思って・・・・・・なんて、そう言われるのが怖い。 天音がいない俺には価値はない・・・・・・・ 「天城くん?」 急にガキの顔がドアップ! 間近に迫っていてギョッと身体を引いた。 火爪さんが抱き締めてくれてたから、あまり後ろには倒れなかったけど。 「目を開けたまま寝てるのかい?」 「お、起きてます」 ちょっと考え事してたら・・・・・・思わず律儀に答えてしまった。 それよりも顔近くない? 「じゃぁ、僕の言う事ちゃんと聞いてたね?」 「・・・・・・・も、もちろんです」 肩に乗せられてる火爪さんの手が震えてる? ちらっと背後を振り返れば、火爪さんが笑いを堪えてる? 俺なんか変な事言いました? 「そういう訳で、白雪学園男子高等部特別コースに編入手続きは済ませてあるから」 ん?編入? 誰が? コテンッと首を傾げる。 「君学生さんだよね?」 が、学生さんです。 そういう君は・・・・・・俺よりガキじゃん。 ピキッと室内の空気がピキッと張り詰めた気がした。 ぽんっと火爪さんが俺の頭に手を乗せる。 「天城・・・・・・うちのリーダー、人の思考を読むから気を付けないとな」 思考を読む? つまり、俺の考えてることが解るってこと? まさかぁ? それじゃあ超能力者じゃん? はははっ、やっぱガキだなぁ・・・・・・そうやって大人の気を引いてるんだ。 「うちは大なり小なり、何かしら特殊能力を持った者の集まりだよ・・・・・・天城くん?」 ん? 「火爪が思考を閉ざしてる分、天城くんの考えてることが包み隠さずダダ漏れ状態で聞こえてる」 はい? 「ず~っと僕の事をガキ呼ばわりしてるよね?」 ドキッとした。 ごくっと喉が大きな音を立てた。 いやいやいやいや・・・・・・俺、読まれやすい表情してたんじゃない? 俺、顔に出やすい? ぺたっと両手で顔を触ってみる。 「あぁ、まだ自己紹介をしてなかったね。僕は国王直属、特殊機関『牙』の第七部隊リーダー、白雪有栖・・・・・・歳は二十九になったばっかりの」 「にじゅうきゅうぅ?」 誰が? 「僕が」 頭が追い付かない。 国王直属の機関のチームのリーダーさんが超童顔な、三十路手前の大人・・・・・・設定のガキ? 俺騙されてる? 「まぁ、信じるか信じないかは君次第、だな」 ニッと口角を上げた。 やっぱり、嘘? ふふんっと身体の向きを変えて部屋の入り口にパタパタと走って行く。 その姿は、やっぱり三十路前の大人には見えない。 「天城、大吾が料理を運んで来る・・・・・・テーブルを用意するから」 「あ、はい」 素直に返事をした直後、きゅっと火爪さんに抱き締められて、ふっと息を飲む。 でも、ニコニコと笑みを浮かべたまま、火爪さんが動かない。 どうかしたんだろうか? 「?」 「手」 手、と言われて自分の腕を辿ってみて・・・・・・ぼんっと顔から火を噴いた。 ずっと握ってたんだ、火爪さんのシャツ! 「すっ、すいません!」 慌てて手を開く。 そこへ白衣の熊男と紅刃が部屋へ入って来た。 「天城?どうした?」 部屋の端に寄せてあったテーブルを移動させながら、俺の様子に気付いた紅刃が気遣ってくれる。 「なんでもない」 わたわたと両腕を振り回して、火爪さんから離れる。 紅刃の視線が火爪に向けられたけど、すぐに俺に向き直って手を伸ばしてきた。 「顔赤い・・・・・・熱は?気分悪いとかは?平気か?」 ぺたって俺の額に手が当てられる。 その手を両手で掴んで離し、安心させるように紅刃の手の甲をぽんぽんっと軽く叩いた。 「大丈夫」 「天城、なんか雰囲気変わった・・・・・・・・何かあった?」 え? 「そうかな?」 何処か変わってる? 自分では解らないけど・・・・・・? その後、白衣の熊男特製、胃に優しい料理の数々をテーブルの上に並べ、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる紅刃が白雪有栖に蹴飛ばされるまで宴(宴って言っていいんだろうか?でも、病院内であの馬鹿騒ぎはいかがなものか?)は続いた。 意外に料理は美味しかった。 心配だった黄馬の事は聞けた。 まだ目は覚めてないけど・・・・・・命に別状はないって。 βだった黄馬がαになってたってのは、まだちょっと信じられないというか、よく解らないけど。 残念ながら、この日、黄馬に会いに行くことは出来なかった。 父さんや鈴江さんとはまだ連絡がついていないらしいけど・・・・・・・・・ くすくす笑いながら紅刃と白雪有栖のはしゃぎっぷりを見てたら、火爪さんが着てた上着を俺に羽織らせてくれた。 部屋の中は空調が完璧で寒いって思わなかったけど、それはとても温かく感じて・・・・・・・・・ すごく安心出来て・・・・・・・・・ 髪を撫でてくれる火爪さんの手が、すごく気持ちよくて・・・・・・・・・ いつの間にか眠ってしまっていた。

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