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第24話

「ま、いいや・・・・・・天城の服は俺が勝手に用意する」 なんで、そこで溜息を吐く? 「紅刃」 「俺好みの天城に仕上げる」 紅刃好み? 「天城を、俺色に染めてやる」 なんか恥ずかしいんですけど? カーテンをぎゅっと握りしめて、振り向けず、窓の外へ視線を向けた。 窓を開ければ、涼しい風が部屋に吹き込む。 「天城、そういえば白雪学園に編入ってことになったろ?」 「え?あぁ、ん」 今更学校に通う事なんてどうでもいいんだけど。 「普通科コースじゃなくて、俺達と同じ特別コース」 そう言えば、そんなことを言われたような気がするけど? 「俺も復学するんだけど、『牙』のメンバーを育成しているのが特別コース・・・・・・普通科とはカリキュラムがいろいろ違うんだ」 俺が、『牙』の監視対象だから? 「年齢層は幅広いから、同じクラスにいる奴が同い年とは限らないんだ」 同じクラスに小学生みたいな子供とか、爺さんみたいな人とかいるってことか? 紅刃がソファから立ち上がって近づいてくる。 ニッと口角を上げて、俺の頬に触れた。 「一緒のクラスになれるといいな」 つまり、特別コースのクラスは一つではないって事だな。 紅刃とクラスが離れても・・・・・・一緒だったとしても、たいして何も変わらないんじゃないか? 俺は仲間じゃなくて、監視対象なんだから。 まぁ、知らない連中から向けられる視線よりは、紅刃からの方がマシなのかな? って!!! 「近い」 なぜか顔を近づけてきた紅刃の顎を掴んで横に向ける。 このまま近づいていたらキスしちゃうだろうが! え?キスするつもりだったのか? なんで? 今ってそんな雰囲気だったか? 「ケチ」 「はぁ?なんっ・・・・・・ン、ンンンッ!」 紅刃の顎を掴んでいた手を取られて、反対の手で後頭部を押さえつけられた。 いきなり押し当てられた紅刃の唇に驚いて、割り込んできた舌を受け入れてしまった。 どんどんっと紅刃の胸を叩くがビクともしない。 上顎に触れて・・・・・・ヤバい、膝から力が抜けてく・・・・・・ 何もかもが絡め取られていくようで・・・・・・・・・ 俺の手を掴んでいた手が離れて、腰に回された。 息が上がってく・・・・・・ 「ンはっ、はうっ」 立ってられない・・・・・・・くっ、苦しい・・・・・・・じわっと目尻に浮かんだ涙が零れて頬を伝う。 酸素が足りないんだ、なんか・・・・・ぼ~っとしてきた。 「ふはっ!」 「天城、だから、鼻から息しろって」 漸く離れた時には、自分の足で立っていることが出来ず、紅刃に全身を預けていた。 「はっ、はぁはぁはぁ・・・・・・うるっ、さい!」 「ちゃんと鼻で息しながらキス出来るように練習しないとな」 うるさいって! っていうか、キスって練習するもんなのか? 「い、いきなりしてくるから・・・・・・」 「ん?じゃぁ、今からキスするって宣言すれば、ちゃんと鼻呼吸が出来て、もっといっぱいキスしてられる?」 「しないっ!」 ちょっと力が戻って来て、思いっきり腕を振り回してみた。 紅刃には簡単に避けられてたけど、その中の一発が紅刃の顎を捉えた。 結構な強さだったと思う。 バコッと音がして、紅刃が俺から手を離し、しゃがみ込むくらいには・・・・・・ 「きょ、凶暴だなぁ」 ふん、ざまぁみろっ! しゃがみ込んだ紅刃の前で、紅刃の支えを失った俺は、ぺたんっと床に座ってしまったけど・・・・・・ 懲りもせず、俺に向かって手を伸ばし、髪を梳かしてくれて・・・・・・ 「でも、気持ち良かったろ?」 キラキラな笑顔を振りまかれても困る。 嫌な気はしなかったから・・・・・・・・・ ふん。 絶対にそんなこと言ってやらないっ! 結局、医療塔から出られたのは、それから二日後。 その間に、眠ったままの黄馬に会う事が出来た。 まだ意識は戻っていなかったけれど、見たことのない機械に囲まれて、いろんな色の管が黄馬の身体に伸びていた。 βだった黄馬がαになったって・・・・・・ 見た感じは何も変わっていないように見えるのに・・・・・・・・・ 目が覚めたら、前と変わらず接してくれるだろうか? 天城坊ちゃんって、笑顔を向けてくれるだろうか・・・・・・・・・ αになったって知ったら、俺の手を離して、何処かへ行ってしまうんじゃないだろうか・・・・・・・・・

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