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第30話 【 小田切誠志郎×葛西当麻 】
【 小田切誠志郎×葛西当麻 】
当麻side
寝癖のついた頭で登校し、門をくぐった所で同級生の風紀委員に捕まった。
「葛西、後ろ寝癖・・・・・・まぁ、これはこれで可愛いけど」
可愛いって言うな。
ネクタイも曲がってた。
ボタンが外れてた。
こいつ、第八部隊所属、藤谷暁のおかげで俺が完成体になっていく。
「おはようございます、葛西先輩」
俺の服装の乱れを正してくれている間、カバンを持ってくれていた後輩くん、姫宮真殊ちゃん。
藤谷と付き合って・・・・・・いや、藤谷が一方的にこの子を番にしたくて口説いてるわけだけど。
突き放さず、こうして一緒にいるってことは、少なからず、藤谷の事は嫌ってはいないってことだよな?
藤谷にしても、無理やり番にすることもなく、こうやって姫宮の意思を尊重してるってのは・・・・・・・紳士だな。
「ヒメ、俺と葛西とじゃぁ態度違わない?」
いや、同じ委員会だから一緒にいるだけ?
「藤谷先輩は、ご自分の日頃の行いをよく反省してください」
まぁ、いいコンビだと思うよ。
藤谷に礼を言って、姫宮に挨拶をして、その場を離れる。
誠志郎が所属している剣道部の朝練、ちょこっと覗いて行こうかな?
あの剣道馬鹿。
日課である部隊の訓練以外にも部活に所属してる。
剣の腕を磨くのが好きで好きで仕方がない。
ただ、そんな暇があるんなら、ちょっとでも俺の側で・・・・・・・・・
「あれ、葛西?」
道場へ足を向けた俺の背中に声を掛けてきたのは誠志郎と同じクラスのヤツだった。
こいつはバスケ部の朝練中かな?
第八部隊の連中は、部活に所属してるヤツが多いけど・・・・・・・まぁ、身体を動かすのが好きなヤツがいいんだな。
不思議そうな顔して近づいてくるけど、俺何か変か?
さっき藤谷に色々直してもらったんだけど?
「お前大丈夫なのか?」
何が?
俺何かやらかしたっけ・・・・・・そんな記憶はないけど?
「小田切が言ってたぞ」
誠志郎?
「昨夜は無茶させてしまったから、今日は学校を休むかもしれないって」
はい?
ビキッと脳内で何かが音を立てた。
俺と誠志郎の関係は学園中に知れ渡ってる。
アイツが全校生徒の前で俺を番にしたと宣言しやがったからだ。
生徒会副会長なんぞやってやがって、職権乱用ってやつ?
だいたい!
なんで生徒会にまで所属してるんだ?
分かってるさ。
アイツは、格好いいし、頭もいい、武術の腕だって一級品!
アイツは必要とされている。
だからって、第八部隊、剣道部、生徒会・・・・・・時間が足りない。
そんな後で俺なんかの相手まで・・・・・・・・・
「葛西?」
あ・・・・・・いかん、なんだっけ?
誠志郎が俺の事を?
目の前ではキラキラした目で、聞いてほしそうに待機してる誠志郎のクラスメート。
「えっと?」
「途中で気を失ってしまうほど無理をさせてしまった、まだまだ自分をコントロール出来ていない、私は未熟者だって落ち込んでたぞ」
誠志郎の声マネしなくていいから・・・・・・って、あいつ何て事を言ってるんだ?
「当麻が全部受け止めてくれるものだから、それに甘えて抑えが利かなくなってな・・・・・・って惚気られて」
ふっと髪を掻き上げるのは誠志郎の癖。
いや、やめてくれ。
「ストップ!」
それ以上は・・・・・・俺はまだ話し続けそうなヤツの口元を両手で押さえつけた。
「待って、本当に待って」
俺今全身がゆでダコみたいだろ?
プシューって蒸気が上がりそうだろ?
ダメだ、道場へ寄るのは止めて教室に行こう。
今は誠志郎の顔が真面に見れなさそう。
放課後。
今日は一度も誠志郎の顔を見ていない。
俺は週一で集まっているミステリー同好会にちょこっと顔を出してから、直帰、蒼風館の地下にある資料室に籠る予定。
「葛西先輩」
ミステリー同好会の部室として借りている理科室の鍵を後輩から受け取る。
「ところで先輩、今日小田切先輩に会いました?」
誠志郎の名前を出されてドキッとした。
「いや、今日は会ってないけど、せぃ、小田切がどうかしたのか?」
誠志郎って名前で呼びそうになっちまった、危ない危ない。
学校ではお互い名字で呼ぼうと決めたのに。
俺達は番だってバレてるけど・・・・・・
これは俺のケジメで。
なんのケジメって聞かれたら答えられないんだけど、ただ、学校で誠志郎って呼んじゃったら・・・・・・・
「今朝、保健室にいたらしいんですけど?」
この後輩が登校したとき、ちょうど保健室から出てくる誠志郎を見たのだそうだ。
誠志郎が保健室?
昨晩は何処も怪我してなかったし、体調悪そうなんてこともなかった。
あいつ、絶好調だったよな?
「ご自分で歩かれてましたから大丈夫だと思いますが?」
あいつ、滅多に病気とか怪我とかしたことないから、保健室とか病院とかと結びつかなくって、すっげぇビックリした。
大したことないってんならいいんだけど、今晩来たら確認してみようか・・・・・・いや、あいつ素直に話すかな?
扉に触れてた手がピタッと止まる。
俺今なんて考えてた?
今晩来たらって?
「うっ」
なっ、何考えてんだ!
昨日来たじゃねぇかっ!
そんな毎晩来られたら俺の身体が壊れるっ!
っじゃなくって、俺っ!何考えてんだぁっ!!!
昨日あんなに抱かれて・・・・・・・いやいやいやいや!
違う!そうじゃないっ!!!
その日の夜、誠志郎は俺の所に来なかった。
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