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第34話 【 小田切誠志郎×葛西当麻 】

【 小田切誠志郎×葛西当麻 】 当麻side 目の前で話をしている誠志郎と桜塚陽人・・・・・・お似合いっちゃぁ、お似合い、なのかな? 御坊ちゃまな誠志郎と、野生児っぽい桜塚陽人。 無表情な誠志郎と、表情がコロコロ変わる桜塚陽人。 2人って、すっごく対照的だな。 俺はどうなんだろう? 誠志郎の隣にいた俺は、他の人間の目にはどう映っていたんだろう? 別にこれと言った取り柄のない俺が・・・・・・・・ 成績優秀、容姿端麗、スポーツ万能、何でも出来るαの隣にいてって・・・・・・あれ? なんだろう? 今さらながらに思うけど・・・・・・俺達、全然吊り合い取れてなくないか? 「・・・・・・ぅま、当麻ってば!」 俺の目の前で手をヒラヒラしながら、桜塚陽人が顔を近づけてきた。 こいつの顔ドアップで見たらドキッてした。 よく見たら、こいつ、結構イケメンの部類に入るんじゃないか? 目ぇ、でっかい・・・・・・まつ毛長い・・・・・・ちょこっと唇荒れてるかな。 「当麻、目ぇ開けたまま寝てんの?ちゃんと俺の話聞いてた?」 むぅっと唇を尖らせて・・・・・・こういうの、女子が見たら可愛いとか言って騒ぐのかな? 「悪い・・・・・・聞いてなかった」 しょうがないなぁって、俺の髪をぐしゃぐしゃに掻き回すのは止めろ! 「だからぁ!俺明日紅玉館っていう寮に入るんだけど、当麻は何処?誠志郎は翠明館だって。当麻は?」 そのまま誠志郎が答えたんじゃないの? 誠志郎は第五部隊の隊員だから、翠明館。 こいつが紅玉館ってことは第八部隊、藤谷と同じってことか。 「俺は蒼風館、第七部隊の所属だから」 「ちぇ、3人とも別々かぁ。同じ寮だったら、同室の奴追い出して、ずっと一緒にいられたのにぃ」 追い出すな。 紅玉館は基本1人部屋だから、こいつに迷惑を掛けられる同居人はいなさそうだな。 蒼風館も1人部屋だけど・・・・・・誠志郎んとこは違う。 誠志郎から同居人のことを聞いたことはないけど。 「だから当麻っ!これ以上目開けたまんま寝るってんなら、俺、ここぞとばかりにディープキスかましてやるぞっ!」 は? 「俺の目の前でか?」 え? 今の低い声・・・・・・誠志郎? 声のした方向を見れば、いかにも不機嫌そうにこちらを睨む誠志郎がいて。 ってか、今・・・・・・自分の事、『俺』って言った? 普段の誠志郎なら一人称は『私』だよな? 「冗談に決まってるじゃん」 そうだな、桜塚陽人の言ったことは冗談・・・・・・なのに・・・・・・ 心臓がバクバク言ってる。 「誠志郎、お前目ぇ怖いよ」 そう言う桜塚陽人、どうしてお前は俺の背後に回って俺を抱き締めてくるんだ? 「俺はさ、俺の事を忘れちゃってるっていう当麻に俺の事を思い出させたいんだぞ?」 そう言われると、ちょこっとだけ罪悪感。 覚えていないのは事実だし。 「衝撃的な何かがあれば、俺の事思い出すかもしんないじゃん?」 ちゅうっ・・・・・・って! 「ちょっ!桜塚っ!」 お前、なんで俺の首に吸い付いてくるんだっ! 背後から抱き締めてる腕は、どうして外せないんだ? そんなに力が入っていないように見えるのに! 俺が非力なだけなのか? 「昔みたいに陽人って呼べよ・・・・・・当麻は、誠志郎の番なんだって聞いたけど」 耳元でそう囁かれて、ゾクッとした。 「お?当麻って耳弱いの?」 お前っ!わざと耳元で囁くなっ! 「はっ、はるっとっ!いい加減離せっ!」 投げやりに叫んで、力一杯こいつの腕に爪を立ててやった。 「イテッ!」 俺の爪が、しっかり桜塚陽人の腕に食い込んだ痕を見て、ざまぁみろって・・・・・・思った瞬間、視界の隅に誠志郎が入った。 「俺の存在は無視か?」 また『俺』って言った。 「大丈夫だって!ちゃんと誠志郎も仲間に入れてやっから!な、当麻!」 何が大丈夫で、何が仲間なんだ? 「俺すっげぇ嬉しいんだぜ?また3人一緒なんだから!」 懲りもせず、俺を背後から抱き締めて、満面の笑みを浮かべてる。 でも俺は・・・・・・なんとか笑顔を作ったつもりだけど、無理してたって丸判り・・・・・・ 「当麻?」 え? いきなり、誠志郎の指先が俺の頬に触れた。 「顔色が優れんようだが、大丈夫か?」 誠志郎、こいつの前で俺に優しくして大丈夫なのか? いや、こうやって自分は優しいってことをアピールしてるのか? 「え?当麻?どっか痛いのか?苦しいところあったりする?」 背後から俺を抱き締めていた桜塚陽人の腕に、更に力が入った気がする。 「陽人、いい加減、当麻を解放してやれ」 あぁ、こいつが俺にくっついてたのが、おもしろくなかったのかな?

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