37 / 73
第37話
資料館に籠ってから時間はどれくらいか流れ・・・・・・・・・
ぐるっと見回した視界にの中に時計はなく、地下ってことで電波が届かないから携帯端末も鳴らなくて・・・・・・・・・
帰って来た紅刃達が俺達を探してくれて。
その頃には体調を悪化させていた灰邑さん(全然気づけなかった)に、一緒に俺を探してくれていた火爪さんが肩を貸して・・・・・・・
地下から出てきたら、当麻先輩に案内された時の寮の雰囲気がガラリと変わっていて、大勢の人が動き回っていた。
灰邑さんを部屋に運ぶために火爪さんとは一旦別れて、俺は隊長さんの、つまり、この第七部隊のリーダーであるガキ、もとい、自称二十九歳の白雪有栖の部屋へと連れて行かれた。
紅刃は部屋から追い出されて、白雪有栖と二人っきり・・・・・・・
高級そうな黒革張りの椅子に腰かけた白雪有栖・・・・・・・すっごく偉そうに見える。
いや、実際偉い人なんだろうけど。
ちっちゃい子供と社長&秘書ごっこしてるみたい。
「鷹宮天城」
名前を呼ばれて、ビクッと肩を飛び上がらせた。
「は、はい」
白雪有栖は、ずっとこちらに背中を向けていて、錯覚だろうか、メラメラと燃え盛る炎で怒りの感情をアピールしているようだ。
機嫌が悪いのって、俺のせい?
俺、何かしました?
「・・・・・・・・・・・・はぁ」
盛大な溜息つかれただけで、ビクッと心臓が飛び上がった。
そう言えば、このガ、いやいや、白雪有栖さんは他人の考えていることが解るって・・・・・・・・
「・・・・・・天城くん、もういい」
もういい?
この役立たずって?
今すぐココから出て行け、とか?
「・・・・・・・・・君の仕事の話をする」
仕事の・・・・・・話?
くるっと椅子を回転させて、漸くこちらを向いてくれた。
眉間に思いっきり深い皺が刻みこまれてて、銀縁眼鏡の奥の瞳が鋭い光を放ったけど・・・・・・
あれ?前に会った時は眼鏡なんてしてなかったよな?
「当麻が寝てしまう前にどれくらい聞いた?」
灰邑さんに酒を盛られて寝ちゃう前は・・・・・・・・
小田切誠志郎さんとの惚気話を長々と聞かされてて・・・・・・・・
「小田切?あぁ、当麻の番か・・・・・・・・で、仕事の話は?」
当麻先輩は確か・・・・・俺が先輩の補佐をするって言って・・・・・・
実際には何をするかは聞いてないけど、後方支援だと言っていた気がする。
「・・・・・・・・・先輩、ねぇ」
白雪有栖にジッと見られてる。
コトンッとテーブルの上に指輪が・・・・・・
材質はなんなのか判らないが、黒光りする金属に赤い石が埋め込まれている。
「これは僕の部下、つまり第七部隊の隊員だという印だ・・・・・・右の人差し指に嵌めろ」
「・・・・・・・・・はい」
素直に指輪を受け取り、早速右手の人差し指に装着!
「じゃぁ、次はコレな」
ニッコリ笑う白雪有栖がドンッと一冊の分厚いファイルを置いた。
「このファイルの中身は全て頭に叩き込め」
ファイルの表紙にラベルは無く、背表紙も購入した時のままっぽく真っ新状態。
結構な重量のファイルを受け取って、パラパラとページを捲ってみる。
白雪学園高等部・・・・・・経営陣から一般生徒に至るまでの個人情報?
学園の見取り図?
あ、地下室まであるのか・・・・・・
「以上」
以上?
何が以上?
このファイルの中身を頭の中に押し込んだ後は?
「今日はもう部屋に戻って休め」
そう言って・・・・・・白雪有栖、リーダーは、俺を、俺に宛がわれた部屋に押し込んだ。
間接照明ってのだけで、ぼんやりと部屋の中が浮かび上がっている。
ぽつんと部屋の真ん中で立ち尽くした。
その数分後、いきなり、勢いよく扉が開かれるまで。
「言い忘れていたが、明日は始業式だから、ちょうど良かった」
それだけを早口で捲くし立てられ、再び、バタンと扉が閉められた。
胸に抱いたままの分厚いファイルに目を落とす。
ちょうど良かったって、何が?
始業式?
こんな時期に?
俺・・・・・・友達百人出来るかな?
いやいや、友達作ってどうするんだ!
ともだちにシェアしよう!