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第38話

がんばらなきゃ。 母さんと天音が死んだのは、ただの事故じゃなくて、本当は・・・・・・・・・本当は殺されたんじゃないか、とか。 それに父さんが関係していたんじゃないか、とか・・・・・・ βからαになったっていう、まだ目が覚めない黄馬の事も心配だし・・・・・・ 考えなきゃいけないことは・・・・・・いっぱいあるけど。 「とにかく、今は!」 分厚いファイルを、ふっかふかなベッドの上で開いてページを捲る。 たぶん、全校生徒分はあるだろう顔写真と、簡単なプロフィールを片っ端から頭の中にインプットしていく。 特別コースの人達も載ってる。 火爪さんや紅刃達もいた。 聞いてたとおり、年齢はバラバラ、αもβもΩもいる。 写真は小さいから、実際あったら印象が違うかもなぁ。 みんな特殊能力がある人達なんだよな? ファイルの後半四分の一くらいは教師、用務員、その他スタッフの人達。 最後に学園の周辺にある建物の用途、詳細、一般生徒専用の寮、『牙』の特別寮とか、印がつけられてる地図が挟み込まれていた。 「迷子になりそう」 この地図、持って歩いたほうがイイかな? でも、東西南北ってよく解らないし。 黄馬がよく言ってたな・・・・・・方角は太陽を見れば解るって。 その意味が解らないけど。 そして、紅刃が、一緒に朝食を摂ろうと起こしに来てくれて朝になってたことを知った。 今日は始業式で、新入生、編入生だけが登校するらしい。 つまり、紅刃達は登校しない。 チーム毎に訓練や、地下の資料室に籠ったりと、決められた予定があるらしい。 まったくの休みであったなら、俺を学校に送ってやるのにと言ってくれたけど・・・・・・ 甘えるわけにはいかない。 例え休みだったとしても俺に構わなくていいよ、と伝えると、ちょっと困ったような表情をした。 第七部隊の隊員の人達は、食堂で、俺の顔を見て挨拶を交わしてくれた。 灰邑さんはまだ体調が悪いらしく顔を見れなかったけど・・・・・・ 当麻先輩はフラフラした足取りで食堂に現れて、いろんな人に介抱されてた。 みんな、とても優しそうで・・・・・・気さくで・・・・・・・ 結構ボディータッチが多い人達で・・・・・・ 俺も、ぽんっと肩を叩かれたり、くしゃっと髪を掻き回されたりして・・・・・・ αやβの人が、俺なんかと普通に接してくれて・・・・・・・・ 俺はどうしたらいいか解らなかったけど、間に紅刃が入ってくれて・・・・・・ 朝食を食べて、やっぱり学校に送ってくって言い出した紅刃を宥めて・・・・・・ ずっと着てた火爪さんの隊服をハンガーに掛けて・・・・・・いや、帰ってきたら火爪さんに帰さなきゃなと思うけど。 俺用に用意されていた制服に着替えて、この蒼風館と言う名の寮を飛び出した。 保護対象、というか、監視対象でもある俺が一人、周囲には誰もいない状態で走ってるってのは不思議だな。 信用されてるんだろうか? それとも、俺が気付いてないだけで、何処かから見られてるとか? あぁ、有り得るよな。 白雪学園高等部・・・・・・・・・ その学園の敷地内にあるという時計塔がが見えてるから。 「・・・・・・よし!」 そして今から、目の前に聳え立つ、一見城にしか見えない白い建物・・・・・・・白雪学園高等部に突入する。 とりあえず、最初に教室へ行かないと・・・・・・ それにしても・・・・・・どっから教室に行けるんだ? 無駄に広くないか? なんか、ずっと同じところをグルグル回ってるみたいだ・・・・・・ ここって、白雪各園の庭・・・・・・っつか森? ぐるっと見渡す限り木しか見えない。 建物は何処だ? さっきまで見えてたはずの時計塔もないぞ? それに、俺が今歩いている道は獣道って感じだし・・・・・・ 普通、もっとちゃんと舗装されてたり、タイルとかが敷き詰められてたりとかしないのか? あれ?あそこにいるのは・・・・・・? 確か・・・・・・俺と同じ、特別コースに転校してきたという士貴正宗。 士貴正宗は何でこんな森の中にいるんだ? 辺りをきょろきょろしながら・・・・・・ でも、俺に気付いてないみたいだな・・・・・・ 俺って本来人見知りだから、自分から声掛けるなんて、ものすっごく勇気がいるわけで・・・・・・ 「おはよう」 ぽんっと肩を叩かれて思考が停止した。 「・・・・・・・・・・え?」 「お・は・よ・う!」 ぬあっ!! 考え事に夢中になっていたら、士貴正宗が目の前に立ってるじゃありませんか! 「え、あ、お、おはよう・・・・・・えっと・・・・・・何か?」 自然に笑え、俺! いや、今の顔、絶対に引き攣ってるんだろうなぁ・・・・・・ははっ・・・・・・ 「いや、お前も俺と同じタイの色してるから一年だろ?こんなところに突っ立ったままってことは、俺と同じで次に何処へ行ったらいいか分からないんだろ?」 はい? 誰と同じって? 「ここ広いもんな?」 「あぁ、確かに広い・・・・・・ね?」 だから? 「お前も迷子になってたんだろ?」

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