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第48話
昨日のアレはなんだったんだ?
光矢ちゃんっていう、自分より遙かに年下の女の子の肩に担がれて縦横無尽に走り抜けられ・・・・・・
気付いたら旧館の入り口に戻って来ていた。
そのまま、蒼風館まで帰って来て部屋に押し込まれ、泥のように眠った。
紅刃が心配してくれたらしいけど、寮の扉は開けられない。
鍵は三本。
部屋の持ち主、つまり俺と、寮の管理人さん、そして・・・・・・・・のちに俺の番になる人。
俺の番の人なんてまだいないから、その一本は俺の部屋の机の引き出しに入っている。
まぁ、ずっと引き出しの中で眠ったままになるかもなぁ・・・・・・・・
「・・・・・・うぅ・・・・・・・・・・・・」
それにしても頭が痛い。
気分が悪くて机に突っ伏していた。
火爪さんも、あれからずっと眠ったままだし・・・・・・俺なんかが、訓練の邪魔をして足を引っ張ってしまったから・・・・・・
「大丈夫か?」
ぽんっと俺の後頭部に手を乗せたのは、士貴正宗・・・・・・
そのまま優しく撫でてくれてる。
「吐くならトイレに行けよ?」
そんな冷たい言葉を投げ付けてきたのは稀鷺湊・・・・・・
「う・・・・・・うぅ・・・・・」
「お前、何か悪いモンでも食ったか?」
悪いモンなんか食ってない!!
そう言ってやりたかったけど、今口を開いたら、なにかを吐き出してしまいそうで、俺はガタンッと勢いよく立ち上がって教室から飛び出した。
そのままトイレへ駆け込もうとして・・・・・・
「予鈴鳴ったろ?」
ぐいっと背後に引っ張られた。
北斗スミレだ。
「ちょっ!」
ヤバイ!
マジで吐きそう・・・・・・俺は両手で口元を覆った。
「ったく、しょうがないから三分待ってやる」
襟首を掴んでいた手が離されると、俺はトイレへ駆け込んだ。
涙目な俺が、担任と一緒に教室へ戻ってくると、一応心配そうな表情を浮かべて稀鷺と士貴正宗が近づいてきた。
「大丈夫か?スミレちゃんに苛められたのか?」
「士貴くん?それはどういう意味かしら?」
バチッと火花が飛んだような気がしたのは俺の気のせいだろうか?
そんな二人の間に挟まれていた俺を、ぐいっと引っ張り出してくれた稀鷺に、そのまま手を引かれて自分の席に座る。
「冗談抜きで、マジに大丈夫か?」
俺そんなにヤバそう?
稀鷺、本気で俺のこと心配してくれてそう・・・・・・案外イイヤツ?
「ごめん・・・・・・吐いたら大分マシになったから」
「大丈夫か、天城」
士貴正宗・・・・・・あんた、いつから俺のこと名前で呼び捨てにしてたっけ?
あれ?
最初からだったような気もする?
「無茶するなよ?いざと言うときに動けなかったら意味ねぇんだからな?」
いざと言うとき?
「貴方達、私の事を無視して随分楽しそうね?」
教壇に立っていた北斗スミレは、俺達に向かってニッコリと笑い掛けた。
あの人には、今のこの状況が楽しそうに見えるのか?
っつうか、あの人は一体何者なんだ?
結界が貼ってある旧館の中へ入るための鍵を渡したのはあの人だ。
あの人が俺に鍵を渡さなければ、旧館へ行けって言わなければ、俺は火爪さん達の訓練を邪魔することはなかったのに。
「鷹宮天城くん?」
名前を呼ばれて、俺はビクッと大きく肩を震わせて立ち上がった。
「は、はい!」
「後で職員室に来なさい」
ま、また?
授業終了後、俺は昨日と同じく再び職員室に向かった。
「・・・・・・失礼します」
昨日と同じで、職員室には北斗スミレ以外誰もいない。
「ほれ」
いきなり目の前に突き出されたモノに半歩引いた。
有名な名前のロゴが飛び込んでくる。
「頭痛薬?」
警戒していた俺の手を取り、手の平にソレを乗せられた。
「ショック療法を試したんだが・・・・・・俺の独断で、強引な手だったと反省した」
はい?
「つまり・・・・・・・あの訓練にお前を強制参加させて、悪かったと言っている」
悪かった、と言うわりには、全然反省してませんよね?
って言うか、この人も『牙』の人?
それに・・・・・・この声、北斗スミレじゃ・・・・・・ない?
女の人の声じゃない。
ちょいちょい言葉使いも変わるなぁとは思っていたけど・・・・・・・・
「白雪からウチのリーダーに抗議が来てて・・・・・・こっぴどく叱られた」
白雪・・・・・・第七部隊のリーダー、白雪有栖?
ってことは、この人は別の部隊の人なんだな?
「お前・・・・・・・俺のこと解ってねぇだろ?」
うわっ、完全に北斗スミレの人格を無視した・・・・・・俺って言った。
「まぁ、しょうがねぇか・・・・・・今生で会うのは初めてだしな」
今生ってことは、前世で関係があった人?
そんなの解るわけないだろ?
「前世で俺はお前を殺したわけだし」
は?
今なんて?
この人が俺を・・・・・・・・・?
「こっ、殺したぁ?!」
「声がでけぇんだよ、お前は!」
口を塞がれて抱き寄せられる。
この筋肉の付き方・・・・・・・女の人のものじゃないよな?
それに胸・・・・・・・・・光矢ちゃんよりもぺったんこで・・・・・・・
え?
声といい、体つきといい・・・・・・この人、男?
どうして女に変装して教師してんだ?
普通に教師すればいいじゃん!
「女の方がいろいろやり易いんだよ」
俺の考えを読んだのか、北斗スミレはそう言って俺を離した。
ってか、何を?
何をやり易いんだ?
聞いちゃいけないことか・・・・・・・・いや、絶対聞いたら後悔する事だな!
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