49 / 73

第49話

その日の夕食は・・・・・・マグロ尽くしだった。 訓練の一環として、海に出ていたチームが釣って帰って来て・・・・・・・ 灰邑さんの華麗なる包丁さばきで、あれよあれよと言う間にマグロは解体されていって・・・・・・・・ 生まれて初めて、あんな大量にマグロを食べた。 もちろんマグロだけじゃなくて、名前の知らない魚もいっぱい・・・・・・・ 海鮮丼とか、刺身とか、なんか豪華だった。 当麻先輩は生魚が食べられないってことで、一人用の七輪引っ張り出して来てで焼いていた。 火爪さんはまだ具合が悪いとかで部屋から出て来なくって・・・・・・・ 様子を見に行きたかったけど、眠っているのを邪魔するわけにもいかないし。 俺の隣にはずっと紅刃がいてくれて、いろいろ世話を焼いてくれてた。 紅刃の目の前には空になった皿がどんどん積み重なっていって・・・・・・・・・ 俺はそれほど魚系は得意じゃないから・・・・・・・・ 紅刃の皿から数切れの刺身をもらって、茶碗一杯の白飯を平らげ、魚介類たっぷりの味噌汁の汁だけを飲み干して席を立った。 まだ頭痛が納まらない。 部屋まで送ると言ってくれた紅刃の申し出を、大丈夫だからとやんわり断って自室に向かって広い廊下を歩く。 昼間の天気とはガラッと変わり、今は雨が降っていた。 窓の外は真っ暗で、雨粒がガラスを叩いている。 窓ガラスに手を添えて外を覗けば、木々の揺れで風が強いことが解る。 さっきまでいた食堂が賑やかだったから気付かなかったけど、遠くで雷も鳴っている。 とっとと部屋に戻って寝よう・・・・・・・ でも・・・・・・・・でも、その前に。 俺の部屋の隣は火爪さんの部屋だから・・・・・・・ちょっと様子見てから。 ノックしてみて返事がなかったら、諦めて自分の部屋に・・・・・・・あ、諦めてって? いやいやいやいや・・・・・・・ 火爪さんの部屋の前に立って、ノックをしようと上げた手・・・・・・・・どうしようか。 ノックする? ノックしない? 下を向いて靴先を見詰める。 寝てるかもしれないし・・・・・・起こしちゃったら悪いし・・・・・・・・どうしようか。 火爪さん大丈夫かなぁ? 苦しくないかなぁ? 俺に何か出来ることはないかなぁ? 「天城?」 え? 名前を呼ばれて顔を上げれば、そこに火爪さんがいて・・・・・・・ いつの間にか扉が開いていて、火爪さんがちょっと驚いたような顔で俺を見下ろしていて・・・・・・ 「どうした、天城?」 前見た時より顔色は良いように見えるけど・・・・・・ 「あ、あの・・・・・火爪さ、んの、あの、具合が、だ、大丈夫かなと」 俺、もっとスラスラ言えたらいいのに・・・・・・なんで緊張してるんだろ? 火爪さんの手がぽんっと頭に置かれた。 「心配かけたようだな・・・・・・もう大丈夫だ」 頭を撫でられてる・・・・・・ 「俺のことより、天城は大丈夫なのか?」 火爪さんの手が降りてきて、俺の頬に触れる。 その手はとても・・・・・・・あたたかくて・・・・・・・・・ 「俺より顔色が悪いように見えるぞ?」 「え?そ、そうですか?」 火爪さんの手が気持ちよくて目を閉じて・・・・・・無意識に擦り寄っていた。 あたたかい・・・・・・・・ 「眠れないのなら一緒に寝るか?」 「・・・・・・・・そうですね」 気持ちいい・・・・・・・・ん? 火爪さん、今なんて? 「じゃぁ、おいで」 はい? くすって笑った火爪さんの手が俺の腰に回されて・・・・・・・

ともだちにシェアしよう!