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第49話
その日の夕食は・・・・・・マグロ尽くしだった。
訓練の一環として、海に出ていたチームが釣って帰って来て・・・・・・・
灰邑さんの華麗なる包丁さばきで、あれよあれよと言う間にマグロは解体されていって・・・・・・・・
生まれて初めて、あんな大量にマグロを食べた。
もちろんマグロだけじゃなくて、名前の知らない魚もいっぱい・・・・・・・
海鮮丼とか、刺身とか、なんか豪華だった。
当麻先輩は生魚が食べられないってことで、一人用の七輪引っ張り出して来てで焼いていた。
火爪さんはまだ具合が悪いとかで部屋から出て来なくって・・・・・・・
様子を見に行きたかったけど、眠っているのを邪魔するわけにもいかないし。
俺の隣にはずっと紅刃がいてくれて、いろいろ世話を焼いてくれてた。
紅刃の目の前には空になった皿がどんどん積み重なっていって・・・・・・・・・
俺はそれほど魚系は得意じゃないから・・・・・・・・
紅刃の皿から数切れの刺身をもらって、茶碗一杯の白飯を平らげ、魚介類たっぷりの味噌汁の汁だけを飲み干して席を立った。
まだ頭痛が納まらない。
部屋まで送ると言ってくれた紅刃の申し出を、大丈夫だからとやんわり断って自室に向かって広い廊下を歩く。
昼間の天気とはガラッと変わり、今は雨が降っていた。
窓の外は真っ暗で、雨粒がガラスを叩いている。
窓ガラスに手を添えて外を覗けば、木々の揺れで風が強いことが解る。
さっきまでいた食堂が賑やかだったから気付かなかったけど、遠くで雷も鳴っている。
とっとと部屋に戻って寝よう・・・・・・・
でも・・・・・・・・でも、その前に。
俺の部屋の隣は火爪さんの部屋だから・・・・・・・ちょっと様子見てから。
ノックしてみて返事がなかったら、諦めて自分の部屋に・・・・・・・あ、諦めてって?
いやいやいやいや・・・・・・・
火爪さんの部屋の前に立って、ノックをしようと上げた手・・・・・・・・どうしようか。
ノックする?
ノックしない?
下を向いて靴先を見詰める。
寝てるかもしれないし・・・・・・起こしちゃったら悪いし・・・・・・・・どうしようか。
火爪さん大丈夫かなぁ?
苦しくないかなぁ?
俺に何か出来ることはないかなぁ?
「天城?」
え?
名前を呼ばれて顔を上げれば、そこに火爪さんがいて・・・・・・・
いつの間にか扉が開いていて、火爪さんがちょっと驚いたような顔で俺を見下ろしていて・・・・・・
「どうした、天城?」
前見た時より顔色は良いように見えるけど・・・・・・
「あ、あの・・・・・火爪さ、んの、あの、具合が、だ、大丈夫かなと」
俺、もっとスラスラ言えたらいいのに・・・・・・なんで緊張してるんだろ?
火爪さんの手がぽんっと頭に置かれた。
「心配かけたようだな・・・・・・もう大丈夫だ」
頭を撫でられてる・・・・・・
「俺のことより、天城は大丈夫なのか?」
火爪さんの手が降りてきて、俺の頬に触れる。
その手はとても・・・・・・・あたたかくて・・・・・・・・・
「俺より顔色が悪いように見えるぞ?」
「え?そ、そうですか?」
火爪さんの手が気持ちよくて目を閉じて・・・・・・無意識に擦り寄っていた。
あたたかい・・・・・・・・
「眠れないのなら一緒に寝るか?」
「・・・・・・・・そうですね」
気持ちいい・・・・・・・・ん?
火爪さん、今なんて?
「じゃぁ、おいで」
はい?
くすって笑った火爪さんの手が俺の腰に回されて・・・・・・・
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