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第51話
火爪さんと・・・・・ちゅっ、ちゅって何度か唇が触れて・・・・・・クスクス笑い合う。
ふわふわなソファから抱き上げられて、ベッドに連れて行ってくれる。
俺は火爪さんの首にきゅっと抱きついた。
「天城」
名前を呼ばれるたびに蕩けていく。
ベッドの上にそっと下ろされて、顔を覗き込まれ・・・・・こつんっと額を合わせた。
火爪さんとくっついていられることが嬉しくて、降ってくるキスにクスクス笑ってると、ゆっくり押し倒された。
頬に当てられた火爪さんの手に擦り寄って、その手の平にキスをする。
「天城・・・・・・キス、好きか?」
「ん・・・・・・すきぃ・・・・・・・火爪さん、キスしよぉ」
触れるだけじゃない・・・・・・
お互いの舌を絡ませ合って、お互いの呼吸を奪っていく・・・・・・
深いキスを・・・・・・・・
「・・・・・・天城はキスが上手いな」
「ふふっ・・・・・紅刃が教えてくれたぁ」
鼻で息をするんだって・・・・・そうすれば、長くキスし合えるんだって。
火爪さんに褒めてもらえちゃった。
「紅刃にか・・・・・・そっか」
あ・・・・・・言っちゃダメだったかな?
失敗した?
「最初は俺が教えたかったな」
拗ねたの?
火爪さん、可愛いよ・・・・・・しょうがないなぁ。
「でも、俺知らないこと、いっぱいある、よ?」
両手を広げて火爪さんを包み込んで、その耳元に囁く。
「火爪さんが全部教えてね?」
いっぱいくっついて、いっぱいキスして、いっぱい火爪さんをちょうだい?
「天城、そんなに煽ると・・・・・・もう止められないぞ?」
「おぉっと、火爪さんはまだ我慢してるの?」
火爪さんの口角がニッと上がって・・・・・・
「凶暴な獣もトロトロ・・・・・・なんだからな?」
「火爪さんはケモノなの?」
「ケモノって言うよりは、ケダモノだな」
ケモノとケダモノ・・・・・・どう違うんかは解らないけど、なんだか凄そうだな。
「恐い?」
「火爪さんだから平気だもん」
火爪さんの頭を抱え込んで、後頭部をなでなで、良い子良い子、と撫でてあげる。
「俺は天城だから加減が出来そうにないよ」
俺をぎゅっと抱き締めて、小さく息を吐いた。
加減なんかしなくていいから、思いっきり俺を欲しがってくれていいよ。
俺を全部あげるから。
「・・・・・・・・ねぇ、火爪さん」
火爪さんが触れている髪も、指も、全部、ぜんぶ・・・・・全部、火爪さんのモノだから。
「首噛んでほしい」
そう口にした途端、ビクッと火爪さんが動きを止めた。
「火爪さん?」
顔を上げた火爪さんは・・・・・・どうしてそんな悲しそうな顔をしてるの?
俺、言っちゃいけないこと言っちゃったの?
「蒼威」
どうして今その名を呼ぶの?
火爪さんの目の前にいるのは、鷹宮天城・・・・・・天城だよ?
火爪さんだって炎帝じゃないでしょ?
蒼威、なんて呼ばないでよ。
「ほつっ」
「蒼威」
違うってば!
どんっと火爪さんの胸を叩いたのに、ぎゅっと抱き締められて・・・・・・・
火爪さんが震えていることに気付いた。
どうして?
寒いの?
「・・・・・・・・・俺は」
俺がいるよ?
火爪さんの背中に腕を回して、震える身体を抱き締める。
「俺はまた失うことになるのか?」
え?
声まで震えてる・・・・・・何をそんなに怯えてるの?
「また・・・・・・・蒼威が」
「火爪さん!」
俺が目の前にいるのに、俺を通して俺以外の奴の事なんて見ないで!
ちょっと強めに、ごつんっと額をぶつける。
「痛っ」
「俺は天城だってばっ!」
ぷくっと頬を膨らませて、じっと瞳を覗き込む。
ちゃんと俺を見て、俺を認識させないと!
誰が今火爪さんの目の前で火爪さんを抱き締めてあげてるのか・・・・・・・俺だよ?
「・・・・・・あま、ぎ?」
何度か瞬きを繰り返して、名前を呼んでくれた。
「天城、天城・・・・・・天城」
そう、そうだよ、火爪さん。
俺は蒼威じゃない。
俺は何処へも行かないから。
俺は側にいるから。
強く抱き締めて俺を求めてくれる火爪さんの背中をポンポンと、赤ちゃんをあやすように叩く。
火爪さんの息が首筋に当たってこしょばゆい・・・・・・
「・・・・・・・火爪さん?」
どうして身体から力が抜けていくんです?
待って・・・・・・さっきより呼吸も落ち着いてない?
「火爪さん?」
返事がない・・・・・・ただの屍のようだ。
って違うっ!
「火爪さん!」
がっちり抱き締められてるから動けない・・・・・・身体から力が抜けてるのに、どうして腕が外せないんだ?
火爪さんの身体、どういう構造になってるんだ?
俺、抱き枕状態・・・・・・・あの結界の中でもそうだったけど・・・・・・・
あぁ、この呼吸の感じ・・・・・完全に寝てるっ!
爆睡に突入しますかっ!
「どうして今寝ちゃうんですか!」
起きない!
俺の身動きと、俺の声で覚醒に導けないなんて!
火爪さん!
俺達、媚薬飲んでたんじゃなかったっけ?
お互い一口ぐらいだったから、効果が切れた?
あれ?
え?待って!俺、なんかとんでもないこと口走ってなかった?
嘘だ・・・・・嘘だ・・・・・・どうしよう!
媚薬の効果って?
恥ずかしい・・・・・ヤバイ!
なんか、とんでもない行動した気がする!
そもそも、俺、火爪さんと一緒にベッドで寝てる・・・・・・って言うか、今起きないでくださいね!
俺、今顔真っ赤だし・・・・・・
身体も火照ってるから、きっと背中に翼が浮かび上がってると思う。
お互い向かい合って抱き合ってるから、背中は見られてないけど・・・・・・って、違うか!
いやいや、唯一の救いは、お互いまだ服を着てるってことで・・・・・・って、違うっ!
一番は・・・・・・・俺、火爪さんに向かって・・・・・・
「首噛んで」
って言った・・・・・・つまり、番になってって言ったんだっ!
火爪さんはどう思ったんだろう?
俺には『運命の番』だった天音がいたのに・・・・・・死んじゃったから次に乗り換える尻軽Ωって思われたかな?
そりゃぁ、天音には噛まれる前で、実際は番にはなれてないんだけど。
媚薬のせいとは言え、目の前にいた火爪さんに甘えて・・・・・・・・・
αなら誰でもいいのかって思われたかな?
俺を包み込んで眠る火爪さんの胸元に抱きついて、ぎゅっと目を閉じる。
嫌われたくないなぁ・・・・・・・
火爪さんに、嫌われたくない。
「・・・・・・・・・火爪さん」
うじうじと暫く考えていたけど、抱き締めてくれてる火爪さんの熱に促されて、いつの間にか俺も眠ってしまった。
何か夢を見た気がするけど・・・・・・・・
朝・・・・・・・・・
何の夢を見たのかは、起きた時思い出せず・・・・・・・・
ただ、お互い顔を合わせるのが恥ずかしくて、挨拶もそこそこに火爪さんの部屋を飛び出した。
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