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第57話
部屋の外は相変わらず騒がしい・・・・・・
小田切さんと、姫抱きされた当麻先輩の姿が見えなくなって・・・・・・
この部屋に残っているのは俺と白峰と、白雪リーダーの三人だけで・・・・・・
「じゃぁ、俺達も行こうか」
リーダーが扉に向かい、白峰がソレに倣って続こうとして・・・・・・動けない俺に振り返った。
「鷹宮くん?」
「あ・・・・・・・・は、はい」
ちょっと待って・・・・・急に動くと身体中が悲鳴を上げるから、ゆっくり、そっと。
階段から落ちたけど骨までは折れてないと思う・・・・・・あちこち打ち付けたから痛いけど。
ちょっとだけ、痛いだけ。
ほんとに、ちょっとだけだから、ちょっと、ゆっくり動けば大丈夫だから・・・・・・
でも、二人に迷惑は掛けられないから。
「あ、えっと・・・・・・先行って」
「階段から落ちただって?」
「は?」
俺の側まで戻って来た白峰が差し出してくれた手が俺の手首を掴み、入り口に立っていた白峰リーダーが・・・・・どうやら俺の思考を読んだらしい。
最近読まれたことがなかったから、いきなり考えてたことを言い当てられてドキッとした。
「じゃぁ、僕が二人を止めてきましょうか?」
え?どういうこと?
さっきは外の二人を止められるのは俺だって・・・・・・言ってませんでした?
いや、だからってどうやれば止まるのかは解らないけど。
俺が原因だって言ってましたよね?
「大きな声で思いっきり叫んで来なさい・・・・・・天城をお姫様抱っこしたかったら、二人共大人しくなるだろう?」
はい?
御姫様抱っこって・・・・・・・誰が?
誰に?
「二人には、じゃんけんでもしてもらおうか・・・・・・なぁ、天城?」
じゃんけん?
「言ってきます!」
ちょっと、白峰、待って!
白峰は俺が止める前に部屋を飛び出して行って・・・・・・その数秒後に。
「鷹宮天城くんをお姫様抱っこしたい人、この指とぉ~まれっ!」
そんな叫び声が聞こえて・・・・・・・・
シンと静まり返った。
白雪リーダーは、なぜか不敵な笑みを浮かべてる。
俺はダラダラの嫌な汗が額に浮かんで頬を伝い、ゴクッと生唾を飲み込んだ。
誰もいなかったらどうしよう・・・・・・俺なんか姫抱きしたくないって。
え?
期待してるわけじゃなくって、別に姫抱きされたいわけじゃないけど!
でも・・・・・・・
ぽわんっと脳裏に火爪さんの顔が浮かんで、更に火爪さんに姫抱きされた自分を想像してしまって・・・・・・
「ふ~ん、天城は火爪にお姫様抱っこされたいんだぁ」
ふふっと笑みを浮かべて、白雪リーダーの顔がドアップで視界を塞いだ。
白雪リーダーの人差し指が、俺の唇に当てられて・・・・・・叫び声を飲み込んだ。
「でも、ここは公平にじゃんけんで決めるから」
頭を撫でられて、ぽんっと肩に手を乗せられた。
子供に子供扱いされてる・・・・・・なんか、複雑だなぁ。
「じゃんけんに負けた方には、天城に上着を貸すって権利を与えてあげることにするか?」
上着、と言われて、改めて自分の格好を確認する。
朝着て出たはずの制服は着てなくて、中の白シャツだけ・・・・・・下はちゃんと履いてる。
周囲を見回しても俺の制服はなさそうで・・・・・・俺達を捕まえた人達に捨てられたんだろうか?
あれ?でも、当麻先輩は着てたし?
どうして俺の制服だけ?
「制服の中に何か入れてたか?」
制服には・・・・・内ポケットに生徒手帳、あとは鍵・・・・・・見覚えのないキーホルダーのついた鍵が入ってたけど。
「じゃぁ念のために、天城の部屋の鍵は替えさせる・・・・・生徒手帳は再発行だな。あぁ、言うのを忘れていた事があった」
白峰リーダーが忘れてたことがあるなんて珍しいですね?
いつも完璧って気がしてましたけど・・・・・・
あれ?え?俺何かしました?
「天城、お前に渡した携帯端末は今何処にある?」
携帯端末・・・・・・あ、寮の部屋の・・・机の引き出しの中に入れてありますけど?
だって失くしたら大変だし。
そもそも、持ってたってどうやって使うのか解らないし。
「携帯端末は携帯しないと意味がねぇだろうが!」
いきなり怒鳴られてビクッと身体が飛び上がった。
おかげで、全身に激痛が走り・・・・・・蹲る。
「すっ、すいません」
見た目は子供だから油断しがちだけど・・・・・・この人は自称二十九歳。
さすが、怒る時の迫力が違う。
俺、あまり人に怒られた経験がないから、新鮮・・・・・・・いや、免疫がなくて。
「甘やかされてきたんだな、坊ちゃん」
あの、いちいち思考を読まないでください。
それに、その、坊ちゃんって呼び方・・・・・・黄馬を思い出しました。
「あぁ、そう言えば、その黄馬って子だけど、先日一度目を覚ましたらしいぞ」
「え?ぐっ!」
ガバッと身体を起こして、再び駆け巡った激痛に沈む。
痛い・・・・・・痛いけど、黄馬が・・・・・
「ほんの数秒だけだったらしいから」
床に額を擦り付ける俺の後頭部を白雪リーダーが撫でてくれてる。
その手がすごく優しくて・・・・・なんか、安心する。
ちょっとずつ痛みが和らいでいく・・・・・・
「その後すぐに眠ってしまって、誰も話を出来ていないらしいけど」
ちゃんと回復に向かってるってことなんだ・・・・・・良かった。
黄馬、もうすぐ会えるかもしれないな。
良かった。
「とりあえず・・・・・・火爪と紅刃、じゃんけん」
え?
「天城!」
顔を上げれば、入り口に荒い呼吸を繰り返す火爪さん達が立ってて・・・・・・
暴れてたって聞いたけど、一見、何処にも怪我をしてなさそうで良かった。
「勝った方が天城を姫抱き、負けた方が天城に上着を貸す・・・・・はい、じゃぁんけぇんっ」
あ!お姫様抱っこぉっ!!!
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