「──……っ！」 　挿入は、思ったよりもスムーズにいった。紅葉が愛してくれたおかげで、臣の身体は準備が整ったらしい。それでも紅葉の屹立を受け入れるには、かなりの努力を強いられることとなった。ねじ込まれるようにして入ってきた一番太いカリの部分を、臣は、必死に膝を開いて受け止めようとする。 「あぁっ……！」 　ぎちっと食んだ場所が引き伸ばされ、みっちりと大きな紅葉のそれが挿入りはじめる。 　無意識のうちに力を抜こうとした臣の腰を掴んだ紅葉の指先に、ぐぐ、と力が入った。 「っ臣ちゃ……っ、キツすぎ……っ」 「ぅぁ……っ、ぁ、っ紅葉……っ！」 　刹那、爪を立てるようにして、紅葉が臣の腰骨を皮膚の上から掴んだ音がした。 「ぁっ……！　動……っかな、っ……！」 　半ば本能のように臣に動くなと言われ、動く隙間もないほど締め付ける臣の後蕾に、紅葉は欲望を持て余した表情を浮かべた。 「っ……、ここで、止まった方が、つらいと思うけど……、ちょっと待ってね、臣ちゃん」 　言うなり、紅葉は先端をおさめただけの中途半端な状態のまま、そっと臣の額の髪を撫でた。頬を指の背で擦り、唇に指の腹を当て、慰撫するようにやがてそれが臣の乳首へと下ろされる。ピンと立ち上がったその場所を甘やかすように幾度かくにくにと触れ、紅葉は腰骨を覆う皮膚に食い込んでいた指を無理矢理に剥がすと、下生えの上でくたりとなった臣の雄の印をそっと掴んだ。 「臣ちゃん、こっち見て」 「ぅ……」 「臣ちゃん。無理にはしないから、泣かないで」 「泣いて、な……っ」 「涙、出てる」 「ない……っ」 　挿入のショックで知らないうちに出た涙で、接着しそうな瞼をそっと開けると、最初に臣の視界に、紅葉の困ったような顔が飛び込んできた。 「ん。臣ちゃんの泣き顔、初めて見た……」 　頷いた紅葉の額から、ぱたたっ、と汗が滴り落ちて臣の肌を打った。 　同じく汗まみれで喘いでいた臣が、強張った身体から少し力が抜けるのを自覚した、その時。紅葉は臣の鼻の頭に鼻先を付け、一言、「ごめんね」と言うと、次の瞬間、強引に最後まで腰を入れた。 「ぁあぁぁっ……！」 　目の前に星が散って、強すぎる衝撃にのけ反ると、そんな臣の身体を紅葉が長い腕で抱きしめた。 「あ……っう、ご、かな……って、言っ……っ！」 　身体がショックに戦慄いている。しかし、強制されるようにして穿たれた熱杭に、早くも臣の身体は順応しはじめていた。入れられた熱い塊にじわじわと中が悦び、締め付けはじめる感覚が、臣にもわかる。急激な挿入に驚きはしたものの、痛みを感じるどころか、内壁は脈打つように紅葉の剛直を迎え入れようとしていた。 「ごめん、臣ちゃん。でも、ひと思いにやった方が、あとがいいと思って……」 「っ……お、前っ……！」 　臣は文句を垂れようとしたが、まるで身体に力が入らなくなっていた。 　紅葉の剛直を飲み込んだ奥が、ドクドクと悦楽に脈動している。ひとつになる瞬間を、強引に決められてしまったことに対して抗議したかったが、臣の想いとは裏腹に、初めて雄を腹の中に迎え入れた身体は、じくじくと鈍い快楽に侵食されていった。 　しかし、当の紅葉は、今度は臣の言うことを聞く気らしく、挿入された熱の塊を引き抜こうとはしなかった。 　それが、次第に臣の精神を侵食していくとも知らずにだ。 「ぁ……っぁ、っ……」 　腹の中は潤みすぎて、締め付けるたびに体液が涎のように漏れ出てきそうだった。 　臣は口にこそ出さなかったが、次第に挿入の衝撃から覚めると、そこにはさらなる打撃を待ち望むオメガの性があった。 「臣ちゃん、痛くして、ごめんね？　でも、また勃起してきたね……？」 　ぬるぬると前を触る紅葉の大きな手に、臣の手にはまるで余りそうな快楽を引き出され、再び前は屹立していた。紅葉の手の中で扱かれるたびに、先端からダラダラと、透明がかった粘液を滴らせた命脈は、それ以上に張り詰めようがないほど、刺激を欲していた。 「あ」 　紅葉が声に出す。 「臣ちゃん、さっきより太いね？」 「っぁ……っ」 　もう出したい、と思ってしまう臣の内心に、紅葉は気付かないままいたぶるように言った。 「臣ちゃんがいいって言うまで、今度は俺、我慢するから……」 　そんな拷問みたいなことをされたら、気が狂ってしまいそうだった。 　臣は、かたくシーツを握りしめていた拳を解いて、どうにか紅葉の背中に手を回した。これ以上の妥協はできない、と思っての行為だったが、紅葉は汗を滴らせた背中を臣の手に預けたまま、困った顔で黙っている。 「……っけ……」 「ん……？」 「動、て……くれって……っぁあ！」 　羞恥心を総動員してそう囁いた直後、紅葉が剛直を酷く抜き差しした。 「あ！　っあ！　紅……っちが、っ！　ぁあっ！　あぁぁっ……！」 　内部がぐちゃぐちゃに混ざり、ずちゅ、ぐじゅ、と凄い音がする。 「臣ちゃ……っ、きもち、い……っ、好き……っ！」 「ひぁ、ゃぁっ……！　ぅぁっ……！　ぁ、あん……！」 　刹那、まるで内壁を引きずられるようにして突如はじまった抽挿に、壁の一際弱い部分をゴリゴリと削られることに臣は嬌声を上げた。すると、紅葉がそこばかり狙ってくるようになり、瞬く間にひとたまりもなく、臣は快楽に堕ちていった。 「臣ちゃん……っ、これ、いい？　こう？　こうすると、いい？」 　いちいち尋ねられても、臣にはその声が届いていても、どうしようもなかった。 　強い悦楽に流されるようにして、次第に噛み締めていた唇が開き、涎が出てくる。同時にいつしか紅葉の背中を、強く引っかいていた。 「紅、葉……っ、そこ、そ……っ、こだ、め……っ！」 「ん、いい？　俺は、いいよ……っ」 「ぁゃ……っ！」 「いい方の駄目？」 「ぅぁあ……っ！」 　ぐりぐりと一点を刺激してくる紅葉の表情もまた、雄の匂いをさせ、蕩けたようになっていた。腰を左右に動かされ、突かれたかと思うと、ぐるりと円を描かれ、そのまま抜き差しされ、弱いところを狙われる。それだけで、あますところなく快楽が刺激されたかと思っていると、別の部分まで開発され、臣はどんどん淫らになっていく自分を止められなくなる。 「臣ちゃん……っ、気持ちいい？　いくらでもあげるから、もっと乱れて……」 　紅葉に言われるまでもなく、臣の全身はまるで快楽を得るためにつくられたように、乱れて蕩けていく。 「ぁゃ──……っ！　ん、ぃ──……っ！」 「可愛いね、臣ちゃん……、ぎゅうぎゅう締まって、俺も気持ちいいよ……っ」 　いつしか、ゆっくりだった抽挿は速まり、やがて腰を穿つようにして、最奧へと打ち付けられるようになっていった。しかも、そのまま射精させるのはもったいないと言わんばかりに、臣の前を紅葉の大きな手が、ぎゅっと締め付けていた。おかげで、透明な先走りの液さえも満足に出させてもらえず、臣は悲鳴を上げるはめに陥った。 「ひぃ、ぁっ……！　おっき、ぃ……っ、中、ぃぁ……っ！」 「中、いいの？　臣ちゃん、可愛い……、ビクビクしてるね、中……、入口と中と奧と、どこが一番いい……？」 「ぁ……！　そ……っな、決め……ら、なっ……！　ぁっぁっ、イッちゃ……！」 「まだダメ」 「ゃぁぁ──……！」 　想いの丈をぶつけられる抽挿に、臣は泣き叫んで哀願したが、許されなかった。そのまま永遠かと思うような時が過ぎ、紅葉の動きにやっと切羽詰まったものが混じり出した頃には、トロトロになった臣は、泣きじゃくってしまっていた。 「ひぃ……っん！　あっ……！　や、らぁ……っ！　もみ、じぃ……！」 「臣ちゃん、可愛い……っ」 「離……っ！　も、イ、くぅ……っ！　イきた……っ、ぃいっ……からぁぁ……！」 　恥も外聞もなく、アルファに強請るようにいつしか腰を蠢かし、臣は泣きながら許しを乞うた。しかし、屹立した根元を押しとどめる指がその程度で外れることはなく、さらなる高みへと放り投げられるようにして、押しやられてゆく。 「駄目だよ、まだ奧、気持ちいいでしょ？　そのまま最奧が開いた状態で、俺の種を出すからね？」 「ぁぅ……っ！　駄、目ぇ……っ！　それっ……、孕んじゃ……ぅ！　ゃぁっ……！」 　まるで言葉とは裏腹に、身体を左右に蠢かせながら、臣は知らず識らずのうちに、紅葉の限界を待ち望んだ。 「ぁぁ……っ、も、イッて、イッ……てぇ……っ！　イきた……っ、一緒に……ぃっ！」 「ん。一緒に、イこう、ね？　臣ちゃん……っ！」 　臣が最後にそう強請ると、紅葉はそっと臣の唇にキスを落とし、眦を濡らす涙を拭う。 「ん、んん……っ！　イッ……く、ぅ……っ！」 「ん、臣ちゃん、イくよ……っ」 　言うなり、そっと縛めが解かれると、臣のそこはみるみる決壊した。 　そして、知り得る限り、出したこともない量の迸りを、腹の上に撒いて、さらにトロトロと白いものの混じる体液を、滴り落とし続けた。 「っぁ、ぁ、っ……ぁぁ……っ、っぁ──……！」 　長く、終わらない絶頂に苛まれつつ射精する臣の、崩れてぐずぐずになった身体を両腕で強く抱きしめた紅葉は、腰を奧まで打ち付けたかと思うと、喉を鳴らし、もたついた熱を臣の体内に吐き出した。