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第10話 果物たちとの交尾(*)

「っぁ……!」  臣が声を上げると、先ほどからずっとしていた蜜柑との交尾を解いた林檎の指が、おそるおそる、まるで壊れ物でも触るように臣に接着した。冷たい指先は腰骨から下へと降り、物欲しげにヒクつく孔をなぞった。 「ぁあ……っ、止……っ!」 「失礼、します……」  臣が静止の声を上げたが、紅葉に促された林檎は、臣の背後へと回ると、鼓動と同じ速さでヒクンヒクン、と蠢く孔へ、おもむろに自分の屹立を──さっきまで蜜柑の中を犯していたものだ──接着させた。 「っ……!」  思わず身体を硬くすると、紅葉が耳朶に囁いた。 「臣ちゃん、いい子。ご褒美、あげるね。……林檎」 「はい……」  紅葉が名を呼ぶと、尾てい骨を触っていた指が、今度は腰骨に触れた。そこを掴まれると、臣はどうしようもなく感じてしまうことがわかっていて、「ぁぅ……っ」と声を上げたが、紅葉はそっと臣の首筋を甘噛みしながら、視線で林檎を促しただけだった。  あてがわれ、貫かれる瞬間、卑猥な水音が漏れた。 「ぁ、あ、っ……!」  林檎は紳士的な腰使いで、ぐっ、ぐっ、と二、三度浅く突いた後で、ぐぷぷ、と音をさせて臣の内部への抽挿を開始した。 「は、はぁっ……! ぁ、ゃ──……っ」  耳を塞ぎたくなるような音とともに、次第に速く出し入れされるようになっていく。臣が振り返ろうと視線を移動させると、それまで林檎に挿入されていた蜜柑が、濡れた目で臣たちの繋がるのを見ながら、自身を扱いているのが見えてしまった。パートナーとの不貞と取られても仕方がないその様子を、まるで熱に浮かされたような目で視界におさめている蜜柑に、臣は胸が引き裂かれるような想いを味わった。 「ぁっ……、ゃぁっ……! ゃ、だぁ……っ」 「く……ぅ、すご、い……っ」  いつしか臣の腰を両手で掴み、腰を蠢かしていた林檎が呻く。  抽挿が深く激しいものに変わっていくに従って、紅葉しか知らなかった臣の後蕾は、林檎の形を覚え込み、いつしか適合して、締め付けるようになっていった。 「ゃ……っだ、も……っ、ゃ……っ!」 「臣ちゃん、林檎のペニス、おいしい……?」  鼓膜に吹き込まれる揶揄の体裁を取られた言葉に、脳髄が痺れて背骨が震えた。首を振って拒否したはずなのに、ゾクゾクと背徳的な快感が、臣の肌を這い上がり、駆け抜けてゆく。中を犯す林檎のペニスは、紅葉のものより若干、径が細く、カリがあまり太くない。だが、長さがあり、激しく動かれると、鋭く最奥を叩かれるような衝撃を、臣にもたらした。  しかも、前は射精が自由にならないコックリングに縛められていて、そのリングで束縛した臣のペニスを、捏ねるように紅葉のペニスが嬲るのだった。 「ん……っ! んん……ぁっ! ゃっ……らぁ!」  ビクン、と一際、臣が強く身体を跳ねさせた瞬間、後蕾の奥の一角に、熱い迸りを感じた臣は、半泣きになった。そんな臣の身体を、自由が利かない強さで、紅葉は抱き続けている。 「ぁ……っ」  林檎が息を詰めて射精し、そのまま昂りを引き抜くと、ぱたたっ、と愛液と精液の混じりものがシーツに散った。腰骨を掴んでいた冷たい手も同時に離され、キスの雨を降らせる紅葉の前への強引な愛撫だけが、臣を繋ぎ止める。 「臣ちゃん、よく頑張ったね。次は蜜柑の番だからね……?」 「ぅ……、っひ、も……っゃ、……っ」 「あと少し……あと少しで、俺たちはつがいになれるから。だから、もう少しだけ頑張って」  紅葉が両腕で臣を抱いたまま、力を込めて慰めた。下腹同士が擦れて、その間で捏ねられる臣のペニスは、もうとっくに限界を迎え、解放を求めていた。それでも紅葉は、力を入れた両腕で臣を支え、アルファとしての言葉を放った。 「次は、蜜柑だよ」 「はい……」  また、腰を冷たい指で掴まれ、次は蜜柑にペニスを挿入される。  だが、蜜柑が挿入すると、その蜜柑の後蕾に、林檎が先ほど精を放ったばかりのペニスを入れた。 「あ──義兄さ……ん」  蜜柑は「すみません……」と誰ともなしに、はしたない声を出したことを詫びると、中出しされ続けて潤み切った臣の中に挿入したペニスを、どうしたらいいのか若干戸惑っているようだった。その蜜柑に教えるように、林檎がグッ、と腰を動かす。すると、ぬじゅっ、と音がして、臣の中に蜜柑のペニスが埋め込まれた。 「ひ……っんん、っ……! も……っ、許、し……っ」  紅葉に縛められたまま、身体の前面でペニスを捏ねられ、後ろに蜜柑のペニスを挿入された臣は、その蜜柑に入れている林檎の動きと、紅葉の動きに揉みくちゃにされることになった。もうどこからが快楽で、どこからが痛みなのか、愉楽に塗れ過ぎて判断のつかなくなった頃、蜜柑がやっと精を臣の中に蒔いたのがわかった。 「ぅ……っ、ひっく……も、これ取っ……っ」  紅葉に支えられていないと崩れ落ちそうになりながら、臣が泣き言を口にした。  すると、紅葉は苦しそうに眉をしかめたまま、そっとうなじを甘噛みして言った。 「ん、臣ちゃん、よくがんばったね。でも、これを取るのはもう少しあとでね?」  四人の乱れた呼気がバラバラに剥がれていく頃になり、やっと紅葉は臣を抱く腕の力を緩めた。 「も、ゃだぁ……っ」  臣は紅葉に抱かれたまま、身も世もなく咽び泣いた。  初夜だというのに、三人もの男に抱かれてしまった。それだけでなく、今まで経験したことのない、強い悦楽を感じてしまっていた。身体が欲している肉体的接触は、おかげである程度まで満たされたが、心をどう整理したらいいのか、わからなかった。  紅葉に願われたことは、できるなら何でもしたいと思ってしまう。それがアルファのためだからか、それとも幼馴染で可愛い紅葉のためだからか、途中から判断するのを放棄してしまった臣は、ただ、紅葉の許しの言葉を待つしかなかった。 「可愛いよ、臣ちゃん。泣かせて、ごめんね……?」 「ぅ……っ、うぅ……っ、紅葉……ぃ、っ……」  慰めるように、あるいは甘えるように、紅葉は臣を抱いたまま、そっと壊れ物でも扱うみたいにキスの雨を降らせる。 「臣ちゃん……いい子だね。大好き。俺の臣ちゃん……」  獣みたいに交尾してしまったことも、紅葉にそれを強いられたことも、一度に三人もに中に出されたことも、どう解釈すればいいのか臣にはわからない。しかし、それよりも前に、縛められたコックリングを外してもらわないことには、身体の熱が下がらなかった。乱交に近いことをしたというのに、紅葉を憎めないどころか、早くリングを取って欲しくて、もっと紅葉に抱いて欲しくて、身体が疼く。  いったい、どうなってしまったのかと自分を訝りながら、臣は紅葉に向けて言った。 「お前が……っ、いい……っ、だか、ら……っ」 「……うん」 「──欲しい、から……っ」 「うん、あげるね」  セックスをはじめて、初めて臣の方から素直にねだった。求めても求めても、飢えがおさまらないのは、愛情を感じているせいだと臣は思う。出逢ってすぐにはわからなかったが、紅葉との想い出をさらううちに、臣の中には紅葉を愛しいと、一番好きだと感じる心が知らず識らずのうちに育っていっていた。思い出した過去をひとつひとつ積み重ねてみれば、今、紅葉に抱かれるのが正解だと心でわかる。 「はや……く、イきた……っ、紅葉ぃ……っ」  キスの合間にそう囁くと、紅葉はぎゅっと臣を抱きしめたあとで、その腕を離して言った。 「四つん這いになって、お尻を見せてくれる?」 「ぇ……っ? な……」 「俺の臣ちゃんなら、できるよね?」  その言葉とともに、紅葉が昏い貌をしたので、臣は思わずゾクリとした。  これ以上、何をされるのか、知りたくないようで、知りたいと思ってしまう。 「っ……」  結局、散々に迷った挙句、臣はそろりと体の向きを変え、四つん這いになり、紅葉に尻を向けた。 「ああ……、素敵になってる。臣ちゃん、果物たちに中で出されて、どれぐらい感じた? すごく良かったのかな? ココが……」 「ぁ……」  言いながら、紅葉のがっしりとした大きな指が、臣の後蕾の入り口をなぞる。 「縁の部分が腫れて、赤くなってる。擦られ続けたおかげで、無垢な孔とは比べものにならないぐらい、いやらしい色になったね……。素敵な眺めだよ」 「っ……言わな……っ」 「臣ちゃんの中に、どれぐらい射精されたのか確認してもいい? 触れてるだけでヒクヒク言ってるけど、中に指を入れたら、どんな風に締まるんだろうね? 臣ちゃん?」 「ふ……っ、ぁ、っ……」  そろりと指の腹で、縁を撫でられるのがわかった。  紅葉は全体的に体温が高いらしく、指先が触れるたびに、そこから熱が移るみたいに熱くなっていく。臣が思わず腰を揺らすと、そのことを揶揄されて、じゅぶ、と耳を覆いたくなる音をさせて、紅葉の指が挿入されるのがわかった。 「臣ちゃん、お尻揺らして、欲しがってるみたいに見えるよ」 「は……っぁ、っ……」 「ああ、最初は一本挿入するだけで大変だったのに、今は余裕で二本飲み込んでるよ。三本目、欲しい? それとも、俺が入れた方がいいかな」 「入れ……っ、ぁ、入れて……ぇ……っ、紅葉ぃ──……っ」 「欲しい? ほんとに?」  こくこくと頷くと、紅葉の指がぐじゅり、と音を立てて中をかき回した。

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