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第14話 幼馴染の焦らし方(*)

 ちゅ、くちゅ、と口内を舐めるいやらしい音がする。臣が自分から進んでキスして、舌を入れると、紅葉が的確に応えてくれる。 「……っ、俺が……っ、初めて、じゃ……ない、だろ……っん」 「キスのこと? ……どう思う?」 「んっ……は」  どう思う、と訊かれると、悪い想像をしてしまう。再教育施設がどんなところなのか、臣には想像もつかなかったが、紅葉がそこで多くの時間を、それこそ臣が過ごしてきた青春のほとんどの時間と同じぐらいの長い時間を、送ってきたことは事実だ。紅葉の口ぶりだと、厳しい規律がありそうだったし、中でどんなことを「再教育」させられるのか、考えはじめるときりがない。 「俺は……っ、初めて……ん、っなのに……狡い、っ……んっ」 「焼きもち焼いてくれるなんて、臣ちゃん、可愛い……ん」 (──くそ……っ!)  頭の芯が痺れて、何も考えられなくなりそうで、臣は紅葉のキスに蕩けそうな自分を叱咤した。  紅葉は「愛してもらいたい」と言った言葉のとおり、臣に主導権を譲ったままだ。なのに、気を抜くと、また発情がはじまってしまいそうなほど、臣は自分が昂ぶっていることを、意識せざるを得なかった。 「ん……はぁ、っ……」  キスには飽きたと言わんばかりに唇を離して、臣は腰を後ろにずらした。  目の前に、これからする口淫など必要ないほど滾った、紅葉の剛直が反り返っていたが、あえて頭を伏せて、その先端に口付けた。  臣がそこに触れると、頭上で紅葉が息を呑む気配がした。  熱い、皮膚の深温が、そのまま剥き出しの先端に宿っている。鈴口を舌先でちろちろと舐めながら根元から裏筋を括れに向かって扱いてやると、ドクドクと激しく脈動した紅葉の屹立は、涙を零しはじめた。 「ん、じょうず、臣ちゃん……」 「んん」  紅葉の少し上ずった声に満足した臣が、喉奥まで咥え込むと、それはさらに大きく発達した。 「っ何で、こんなになるんだよ……っ」  目の前で、臣の愛撫に感じ入って形が変わっていく熱杭に、思わず臣は怯んでしまった。 「そりゃ、相手が臣ちゃんだから?」 「そういうことを、軽々しく言うな……っ」  臣が握った手で緩々と扱くのを見た紅葉は、切なげに我慢の表情を浮かべ、言う。 「臣ちゃん、焦らすの上手いね……? イきそうになったら、言うからね……?」  こんなに張り詰めて、エラが張っていて大きい。  これが自分の中に入るなんて、にわかには考えられない容積だ。  臣は負けず嫌いの一面がむくむくと頭をもたげ、再び利き手で紅葉の陽根を扱きながら、余った部分をどうにか口内に入れ、吸い上げた。 「ん……っ、ふ、はぁ……っ」  口の中に紅葉の先走りが出てきて、「ね、臣ちゃん……っ、イきそ……っ」という紅葉の声を頭の後ろで聞いた臣が、口を外すと、紅葉がたまらないという顔になった。口淫を止めた臣は、紅葉の屹立を支え持ち、手で扱きながら、反対側の手を後ろに回すと、自分の後蕾を指で探った。 「は……っ」  臣が後蕾を探りながら、身体を無意識にくねらせると、紅葉は切羽詰まった顔で、臣の腰を抱いた。そのまま反り返った臣に、自身の屹立をぶつけ、二人分のそれを臣の空いた方の手に握らせると、紅葉は自分の手を、その上に重ねた。 「臣ちゃんが可愛いから、ご褒美」  言って、重なった肉棒の先端を柔らかに捏ねる。 「ぁ……っ!」 「後ろがお留守になってるよ、臣ちゃん。ちゃんと解さないと、あとが大変だからね……?」 「わ、か……っ、んっ、ぁっ……!」  崩れそうになった体勢をどうにか膝で立て直し、ぬじゅ、くちゅ、と音が立つのも構わずに後孔を練ると、やにわに紅葉の腰を支えていた手が臣の後ろに回った。 「ぁっぁ……!」  中に、第二関節まで入った臣の指に、添わせるようにして紅葉の指が添えられる。それが、ぐぐ、と臣の指を押すようにして挿入り込んできて、いつしか臣のいい場所を強く押してくるのだった。 「臣ちゃん、オメガは濡れるっていうけど、中、ぐしょぐしょ? 気持ちよくなるように、俺も手伝うから、もっと自分でしてみて……?」 「ゃぁ……っ、ん!」  卑猥な水音を立てながら、いつしか臣を促すように、紅葉の指が中で踊りはじめる。  そうすると、もう何が何だか、わからなくなってしまう臣だった。 「ぁっ……ぁ! んんぅ……っ、ん、んんっ……!」 「臣ちゃん、いい? 自分の指と俺の指の区別、つく? ……どちらがいいのかな? あ、ほら、前がお留守だよ。扱いて……そう。上手いね。腰、揺れてる。気持ちいい? どんな風にいいの?」  紅葉に言われるたび、臣は次第に耳が、頬が、全身が発火したみたいに赤くなっていくのを感じた。  してもらうより、自分でする方が、ずっと怖いし、恥ずかしい。ベッドでの紅葉は、気が狂いそうなほど恥ずかしいことを、平気で言ってくる男になった。臣が羞恥に身体を強張らせると、すかさず愛撫がそれを蕩かす。 「声、出していいよ……? 俺しか聞いてないんだし。それともキス、してくれる?」 「は……っぁぁっ、ん、んっぁ……っ、き、もちぃ……っ」  とうとう臣が根負けして、思わず言ってしまう。言葉にしないと、身体の内部が崩壊していきそうな強い悦楽に襲われたせいだった。 「紅葉……っ、俺──……っ」 (──好きだ)  不意に、そう思った。  もしも紅葉が臣を憎んでも、嫌われても、避けられても、きっともう、元には戻れない。  紅葉のことを忘れていた頃の臣には、どう頑張っても、戻ることはできないだろう。  だから。 「もー……っ、欲しい……っ、お前の、コレ、入れたい……っ」  中がじんじんと疼く。  酷くされたいほどに。  入れて、擦って、かき回して、貫いて、ぐちゃぐちゃになるまで、滅茶苦茶にして欲しい。  ドクドクと主張を繰り返す紅葉の肉茎と同じように、臣の後孔も脈打ち、中が痺れて物欲しそうに収縮するのがわかった。言えない気持ちが募ってゆくほど、臣は紅葉に対して、次第に大胆になっていく自分を意識する。 「……ん。俺も臣ちゃんの中で暴れたい」  言うと、どちらからともなく、きつく抱き合った。紅葉が支えてくれている屹立に、臣が照準を合わせ、腰を左右に揺らしながら、後蕾にその雄芯を食んでいく。襞が限界近くまで引き伸ばされ、みしみしと音がしそうな緊張感とともに、紅葉が中へと挿入される。 「ぁ……あぁ……、あぁっ……っ」  根元まで食んでしまうと、痺れるような快楽にぎゅっと紅葉を締め付けてしまう。  臣がくたりとなってしまったのを抱きとめた紅葉が、そっと耳朶に囁きかけた。 「っ少し、慣れてきた、みたいだね……っ、中が、いい感じに締まる……っ」 「は……っぁ」  紅葉と同時に、臣も熱い吐息をひと吐きした。  腰を支えていた紅葉の腕が、臣の身体をゆっくりと揺らしはじめる。アルファの雄の貌になった紅葉は、初めて見るほど真剣な表情で、臣を伺いながら、欲情を露わにしていた。  ──紅葉。  臣は、その瞬間、紅葉のものになったことを、痛いほどに自覚した。 「ぁ……っ、ぁ、い、ぃぃ……っ」  紅葉とともに、進んでいく道を想うと、胸が痛むほど、感じる。  もしもこの先、別れることになったとしても、紅葉と過ごした時間のことは、絶対に忘れない──そう臣は心に誓った。 「ぁ、ぁっ……! そこ、っ……ぁ!」 「ここ?」 「んっ! そこ……っ、い、ぃーっ……! 紅葉……っ、も、みじ……っ!」 「臣ちゃん、可愛いね。俺の前で、そんな風にねだってくれるなんて、嬉しい……っ」 「ぁっ……欲し、っ……気持ち、いぃ……っ! お願い、紅葉──……っ!」  もっと、と強請った瞬間、ポロリと涙が出た。  まさか、そんな、と思う前に、紅葉の唇がそれを吸い取る。 「臣ちゃん……っ」  感極まって泣きだした臣を、紅葉はゆっくりと揺さぶりながら、高みへと導いてゆく。 「好きだよ、臣ちゃん……」  何度、繰り返されたか、もう数え切れないその言葉に、臣は感情を抑えることができず、紅葉に縋った。紅葉は、好き、好きだよ、愛してる、可愛い、素敵だね、大好き、と次々、言いながら、臣の中をひっきりなしにかき回し、抉り、貫いた。  そのたびに、ぽろぽろと涙を零す臣に何を想ったか。  上り詰めていく臣を抱きかかえながら、紅葉もまた、悦楽の中へと堕ちていくようだった──。

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