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二、分岐点①

*** 点滴をつけた腕を見つめながら、先ほどからずっと土下座して必死で謝罪しているおじいさんとご両親から顔を背けていた。  何度も何度も謝るおじいさんと、意外にも彼のご両親は男性二人でαとΩのカップルだったらしい。  母は泣き、父が怒りで身体を震わせながら母の肩を抱いていた。 ああ。 あんなに謝ってくるってことは、現実なんだなあ。 「……僕、レイプされちゃったんですね」  僕の言葉に、母がわあと泣き出す。  額を擦りつけて謝っているのは、製薬会社CEOって言われていた彼の祖父。  必死で謝っている二人は、この沖沼病院の院長と理事長。    あーあ。そうか。  目覚めなければよかったな。 「番の解消って、できるんですか」  僕の言葉に、彼の父親であるらしい人が「わからない。君は無理にヒートさせられたので、きちんとした手段ではなかった」からと。 「つまり正式な番でもないんですね。良かった。あんなのと番なんて、死んだ方がいいですから」  ふふっと僕が笑うと、土下座していた三人は息を飲んた。  治療は全て無償ですること。  日本でも導入するはずだった薬での事件は、今後のΩを助けるための躍進に支障がでてしまうこと。  僕が使われた薬は、手順を踏んで用量を守ってつかえばΩの負担が大きく減ってくること。 ここで中止になったら、日本が先進国の中で医療の発達が著しく低下してしまうことを説明された。 要は、僕以外のΩのために今回のレイプ事件の口封じということだ。 信じられないぐらいの金額を提示され、母は泣いて怒っていた。 「利圭は?」  父に尋ねると、隣の部屋で眠っていると。錯乱していたので鎮痛剤を打ち、落ち着かせているらしい。 「利圭に会いに行きます」  土下座する大人三人を無視し、すり抜ける。

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