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二、分岐点⑤

 無理やりヒートさせて運命だと気づかせたら、そこで両想い。結局はセックスするんだろ。  互いの体液で汚れて、互いの体重で体中が痛くて、女性みたいな喘ぎに興奮して、泣いても懇願しても、力で押さえつけて欲望を放って。 「うっ」  思い出して吐きそうになって口を押えた。 慌てて洗面台に走っていくと、口の中が火傷しそうな苦い液体が広がった。 何度も口の中をすすぎながら、表情の消えた自分の顔を触る。 「壮爾さんっ」 「僕の傷は治りませんよ。貴方が傍に居たら」 「……申し訳」 「謝って自分だけすっきりしないで。僕と利圭は、将来、好きな人がいても番うこともできない。将来、アルファとはもう恋愛できない。何もかも、理性を保てない馬鹿のせいで壊されたんだ。誰かに惹かれる度に、レイプされた日を思い出す。項の傷が痛むんだ」  怖かった。  めちゃくちゃ怖かった。理性が壊れるほど叫んだし懇願したんだ。  運命だというなら、止めてくれてもよかったんじゃないか。 「俺は、あんたを見た瞬間、俺のモノだって思った。それに、花を生けるあんたを俺はすっと見てたし」 「ストーカー」 「順番もめちゃくちゃだし、合意じゃねえし怖がらせてばっかだけど、二度と傷つけない。あんたは間違いなく俺の運命なんだ」  ガキ。  子どものくせに、運命だからと薬盛って番にして、それでも告白できる立場だと勘違いしているのか。 「チャンスをくれ。あんたの次のヒートで、俺を運命と思わなかったら、訴えてくれて構わない。それまで、せめて一生残る傷だけでも償わせてほしい」 「都合のいい話ですね」 「毎日来る。絶対にあんたも俺が運命だって証明させる」  まだ何か言おうとしていたが、小さく開いたドアから彼のご両親が飛び出してきて頭を叩き引きずりながら出ていった。  ……あんな性欲の塊みたいな男が僕の番か。  十八歳も迎える前で、ヒートの経験もないまま、色々と失ってしまった。 「壮爾、入るぞ」

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