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二、分岐点⑧

 彼の空気を読まない発言に、教室中がざわめいた。  今まで色恋沙汰に全く縁がなかった僕だから、珍しいのか皆の視線が僕に注がれた。 「なに? なんで驚いてんの。この人、綺麗じゃん」 「綺麗じゃなくて、女っぽいおかまみたいな顔ってことでしょ。そりゃあ、おかまみたいな僕に告白する君は気持ち悪いでしょ」 「はあ? あんた、それまじで言ってんの。そりゃあこんな勘違いしてたらその年まで童--」  彼が何を言おうとしているのか分かったので、足を蹴った。  悪かったね。童貞を卒業しないまま、僕はのうのうと君にレイプされましたよ。 「男とか女とか、運命の番の前では関係ないっしょ。この人は俺の運命だから」  きゃーっと黄色い声が上がる。  なぜだ。  こんなレイプ魔の歯の浮いたセリフなんて馬鹿らしいだけだろう。  なんで皆、僕の返事に聞き耳を立ててるんだ。 「……二度と話しかけないでください」  僕の言葉に、騒いでいた女子が固まるのが分かった。  こそこそと「酷い」とか「こんな格好いいのに」と何故か僕への批判の声まで聞こえてくる。 「いやだね。あんたに誰かが手を出さないよう、絶対に離れねぇから」  自分勝手な発言に、わなわなと両手が震えた。  どんな意見や影口を貰ってもかまわない。この反省のはの字も知らない恥知らずを、殴ってやりたい。 「仕方ねえだろ。止まんねえんだよ。運命ってのは、そんなもんなんだって」 「うるさい、うるさいうるさい」 「俺は、この男が世界で一番――」 「宥一郎」  教室に飛び込んできた生徒会長に頭を拳骨で殴られ、大げさに頭を押さえる。 「ってぇえ」 「壮爾くん? 大丈夫?」  生徒会長まで教室に入ってきた瞬間、カタカタと震える自分の肩を押さえた。 「顔が真っ白よ」 「大丈夫?」 「病み上がりなのに無理しないで」 「ごめっごめ――」  こんな場所で吐きたくないのに、体中を恐怖が支配した。  憎いのに。大嫌いなのに。身体はあの日、凌辱された記憶が刻まれているんだ。 「……調子に乗って悪かった」

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