22 / 91

二、分岐点⑨

 震える僕に、ブレザーの上着を頭からかぶせると、急に抱きかかえられた。 「っや、はなせっはな」 「保健室へ連れて行くだけだから。俺は触ってない。生徒会長」 「もっと嫌だ。離せ」  教室から出て人気のいない階段の踊り場まで来ると、やっと解放された。  しかし下ろされても、腰が抜けたのが座り込んでしまって動けない。 「告白からやり直そうと思ったんだ。悪かった」 「……敬語の意味も忘れたのか」 「申し訳ありませんでした」 「俺もすまなかった」  生徒会長とこの男が僕に頭を下げている。頭を下げても、到底許してやれる気分ではない。  けれど、もし。  この男じゃなかったら。  もしヒートを無理やり起こされていなかったら。  少なくても少女漫画みたいな告白だったのは滑稽だ。 「運命なんて信じてるんですか?」  クスクスと笑ってやった。  驚いて二人が僕を見ているので、首を傾げてやる。 「運命なんて、少女漫画だけでしょ。本当に運命なんてあったら、オメガがレイプされるはず、ないんですから」  運命なんて、本当は御伽噺ですよ。  諦めるんだ。  夢を見るのはやめるんだ。  そうすれば自分の心は守れるのだと分かった。 「それでも、あんたはやっぱり俺の運命だ」  寝ぼけた馬鹿の目を覚ますために、大きく手を振り上げ頬を打った。  暴力で抗っても、僕の項の傷は癒えないのに。 「好きだ」 「僕を想ってくれるなら、屋上から飛び降りてください」  僕の言葉に、目を見開く。 「飛び降りて、それでも足掻いてみっともなく生きてたら、信じてあげてもいいですよ」    そのまま飛び降りて消えてくれれば、僕は嬉しいけど。 素直な言葉を伝えると、彼がやっと止まってくれた。 僕がどれだけ君を憎んでいるか、分かってくれたらそれでいい。 「……運命にこんなに拒絶されると、胸が痛むんだな」  自分に酔った愚かな言葉だと思った。 「分かった。行ってくる」

ともだちにシェアしよう!