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二、分岐点⑮
僕だけじゃなく利圭のケアもしてくれるらしい。零時さんは、沖沼くんみたいな偉そうなアルファではなく、インテリで大人なアルファでちょっと信用できそうな雰囲気だった。
「話、終わった?」
教室の前で待っていてくれた妃芽之くんが、心配そうに僕の顔を見上げる。
ふわふわの羊みたいな可愛い男の子。少女漫画に出てきそうなオメガの美少年って感じ。
そして彼は自分の可愛さを最大の武器にしてそうなあざとさもある。
「君は、何年生なの」
「僕も三年生だよ。えっと長男が製薬会社社長、次男が沖沼病院院長、三男はオメガで僕の父親。祖母と一緒にオメガを保護するボランティア団体で活動してんの。虐待されたオメガの保護とか。あとは差別されてたらうちの団体が弁護士つけてくれたり」
「ふうん。あの、僕あまり沖沼家って今回の件で好きじゃなくなって」
「分かる分かるぅ。でも番以外と発情できないじゃん? 溜まったら僕に相談して。合法のパーティーとか斡旋するから」
「ご……」
合法パーティ?
「身元がしっかりしているご令嬢やご子息だけのパーティだよ。ゴム必須だしピル服用だけど、合法」
「妃芽之」
話を続けようとしていた彼の口にメロンパンが押し込まれた。
「壮爾さんに変な話やめろよ。この人はお前と違って純情なんだよ」
「なんで一年生が三年の教室にまた来てるんだよ」
職寝室に呼ばれていたはずの沖沼くんが、さも当たり前のように僕の隣にやってくるのは、まだ腹立たしさを感じる。
「慣れなれしいのは好きじゃない」
「すぐ戻る。あんたの顔を見ないと心配なんだから仕方ないじゃん」
「強姦魔が何を言うんだよって感じ」
妃芽之くんが追い払ってくれたおかげで、さっさと戻ってくれた。
廊下を歩く沖沼くんは、他の男子生徒より頭一つ大きく、一年のくせに威圧的で皆が端に避けていた。
三年の廊下で、本当にふてぶてしい奴だ。
「でもエッチはさあ」
「は?」
ぼうっと彼の背中を見ていたせいで、聞きなれない言葉に思わず飛び上がってしまった。
妃芽之くんは、続けて言う。
「エッチさは、顔見なくてバックで項噛まれながらやったら、超気持ちいいよ。噛まれるたびにイっちゃうんだよ。宥一郎のことはさあ、ヒート中のセフレ、棒って思ってエッチだけする関係も有りだよ」
これ言うと、おばあちゃんも父さんも怒るんだけどねとケタケタ笑う。
笑い方は零時先生と同じなのに、彼の発言は下品過ぎだ。
でも僕の気持ちを理解してくれようとする零時先生と、性に開放的な彼は潔癖な僕にいい塩梅なんだと思うことにする。いや、そう思いたい。
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