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二、分岐点⑲

 ヘルメットを投げつけられ、呆然としていると後ろに乗れと合図された。 「津々村は、小学校のころまでバイク屋によく居たんだが、そこに行っていないか」 「なんで生徒会長が知ってるの」  親戚がいない利圭は、父親が数日居ないときは、友人の家に預けられていることがったとか、その友人さんが食事を持って来てくれたりしていたとか。  でも中学で僕と会ってからは、一人で過ごせるから回数が減ったって言っていた。  だからその話を知っていても、場所は分からない。 「俺が知っている。その場所へ向かう。乗って」 「だから、なんで生徒会長がそれを知ってるんだよ」  レイプ野郎の言うことを聞くのが嫌で、イライラしてしまう。 「……俺もバイクに興味があって偶に眺めに行っていた。その時に一目ぼれだった」  頭を誰かに殴られたような衝撃。  一目ぼれに嫌われ、強行突破したってこと。  生徒会長は自分の気持ちを何も吐露しないから何を考えているのかもわからず不気味だった。  ***  生徒会長とバイク屋に向かったが、そこには居なかった。  いなかったが、そこの店長さんが顔色を変え病院へ向かった。利圭が店に来たら保護してくれるよう今日は24時間開けてくれるらしい。  僕は何十回目かわからないが電話をかける。でも繋がることはなかった。  今日は利圭の家の前で、帰ってくるか待つことにした。  二階建ての木造アパート。二階の一番端の利圭の部屋は真っ暗で、どこかで犬が泣く声しかしない。 「壮爾さん」 「……はあ。お前か」  毛布を二枚持った沖沼がやってきて、僕の肩に毛布を掛ける。  そして自分もかぶると、スポーツバッグを漁りだした。 「大家に鍵をもらってんだろ。中で待てばいいじゃん」 「僕の勝手だろ。君には関係ないのだからさっさと帰れよ」  生徒会長は再びバイクで行きそうな場所に片っ端から探しに行っている。  警察も動いてくれているし、学校の友達も探してくれている。  なのに利圭がどこにもいないんだ。  太陽が失ってしまったような、静かな世界に絶望しか感じられない。 「これも、俺と征があんたらを襲ってしまったせいなんだろ」 「分かってるなら、もう関わってくるな! お前たちのせいでめちゃくちゃなんだよ!」  肩にかけてもらった毛布を地面に叩きつけながら叫ぶと、彼はその毛布を手に持った。 「壮爾さん、俺を呼びつけたあの日、最初に利圭さんのことを聞いてきただろ」 「……だからなに」 「自分も酷い目在ったのに、親友の心配をするなんて、やっぱこの人が好きだなって思ったんだ」 「……気持ち悪い」  この状況で何を言っているんだ。お前のことなんてどうでもいい。  消えてくれてかまわないのに。 「俺が絶対に探し出す」    

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