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二、分岐点⑳
「君じゃ無理だよ。利圭のこと、何も知らないでしょ」
「でも俺は一生、運命の番から嫌われていきたくない。あんたにはやく笑ってほしい」
ただのエゴだ。
そんなの項を噛んで支配した側の自分勝手な言い分だ。
***
それでも、彼はその日、僕に毛布を二つと栄養ドリンクやゼリーが入ったスポーツバックを預けたのち、姿を消した。
利圭も見つからず、おじさんのお葬式を待ってもらう形になっているが、それもギリギリだ。事故で遺体の損傷は激しかったが、痛んでしまう前に最後のお別れもしてほしい。
生徒会長と沖沼くんは警察に任せていられないと自分たちで探し始め、僕は利圭の父親の友人の佐伯さんと手分けしたが見つからない。
無事でいてほしい。無事でいてほしい。
それなのに利圭の携帯へ電話をするのに手が震えた。
二日目の朝、電池が切れたのか電話は繋がらなくなった。
零時先生が心配して利圭のアパートの前で座っていた僕を診察しに来た。
「先生、利圭は?」
「……まだ何も。けれど無事であることは、親友である君が一番よくわかっているでしょ」
全く味が感じられないゼリーを勧められ、二日ぶりに喉を固形物が通った。
けれど泥を飲み干すように喉に引っかかって、こくんと飲み込むのに痛みが感じられた。
「零時さん、おばあちゃんから電話。ボランティアの方からも捜索の協力したいって」
「ああ。香川くんを頼みますよ」
先生が一度、車の中へ戻る。
すると妃芽之くんが僕の隣に座ると、小さな声で言った。
「あの二人、津々村利圭くんの居場所を突き止めたっぽいよ」
「は!?」
二日も探しても見つからなかったのに?
電話もつながらなかったのに?
だったら一番に僕に連絡してくれたらいいのに。
「利圭は無事なのか!」
「しー。零時さんに聞こえたら面倒だよ。案内するから、覚悟できる?」
「覚悟って……なんだよ」
声が震えてしまう。覚悟って一体なんだよ。なんで覚悟が必要なんだ。
「僕たちも侵入しないといけないんだよ。合法パーティー」
「……君が以前、言っていた乱れたパーティのことか」
彼が頷くので、座っていたのに立ち眩みがした。
なぜ利圭がそんなパーティーに参加してるんだ
「津々村利圭は大金を持ってたんでしょ。VIP待遇だから、安全だと思うよ。でも辛いことが多かったから正気じゃないかもしれない。だからあの二人は手間取ってるんだと思うけど、君なら助けられるんじゃない」
「助けられるかなんてわからない。利圭には僕以上に辛いことばかり起ってしまったから。でも会いたい。何ができるか分からない。でも会いたい」
そこにいると分かっていて、アパートの前で待っているなんて嫌だ。
「分かった。適当に零時さん撒くから。撒いたら、駅で集合ね」
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