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二、分岐点26
「行こう。妃芽之くんが手配してくれるはず」
「えー、行かなきでよお」
利圭を連れて出て行こうとしたら、利圭の匂いに充てられ興奮したアルファたちに手を掴まれた。
「君もアルファでしょ。楽しもうよ」
下着姿の男が僕の腕を掴むと、振りほどけなくてもがく。なんでこんなやつに力で負けてしまうんだ。
クラスメイトの二人も、僕のバスローブを引っ張っていた。
「妃芽之さんっ」
「あーん、ちょっとまって。利圭くん、惑わせすぎ。想像以上に人数多いんだってば」
妃芽之さんが何人か引き剝がしてくれたり、小さな体で背負い投げしたりと助けてくれているが、数が多すぎた。女性は五人、男性アルファはその倍はいる。端っこで首輪をしたオメガの男女数人は様子を伺っているだけで助けてはくれなさそうだ。
僕一人で、なんとか利圭だけでもこの部屋から連れ出したいのに、上手くいかない。
「何してんだよ、あんた、馬鹿か」
その言葉で、身体にまとわりついていた手が簡単に振りほどかれた。
「なんでここに来てんだよ、いや、なんでいるんだ」
驚いているのは、黒服姿の沖沼くんだった。
「宥一郎、利圭はいたのか」
「あー、征一郎は番だから充てられるよ。来ねえほうがいい」
腕を掴まれ、立たされた。
そしてぐったりと僕の胸に倒れ込んでいた利圭を軽々と抱えた。
「俺はあんたの番だからさ、この匂いに充てられねえよ。もう大丈夫だから」
「そ、そんな米俵みたいに利圭を抱え込むな」
「残念。お姫様抱っこは、あんた以外しないんで」
乱れたバスローブを整えてくれると、そのまま手を握ってくれた。
妃芽之くんも、急いで利圭の口の中に抑制剤を押し込んでくれた。
「場所はわかったんだけど、――助けるのに時間かかって悪かった」
利圭を抱きかかえながら、こちらをみない沖沼くんは、殊勝な態度だ。
少し離れて心配げに見てくる生徒会長までも、一緒だ。
「……助けるも何も、原因は君たちだろ」
他人事みたいに言うなよ。全ての原拠がヒーローみたいに登場しないでほしい。
「ぶっ確かに。ウケるう」
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