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三、免罪符と運命⑦

「僕が出てあげるよ」  妃芽之くんが大きなため息とともにドアを開けた。 「あのさ、なんで壮爾くんに近づくわけ? お前、自分が何やったか分かって纏わりついてんなら、御婆様に報告するから」 「……渡しておいて」 「バイバイ」  ドアを閉めた妃芽之くんが、舌を出しながら両手で大きな包みを持っている。  お弁当を端によけてその包みを開けると、三重の重箱だった。一段目がおにぎり、二段目がおかず、三段目に和菓子が入っている。和菓子の見た目からして、茶道部も買っている有名店だ。 「多分、壮爾くんがご飯食べてないんじゃないかって勝手に誤解したんじゃない? 和菓子以外は手作りならきもいでしょ。食べなくていいんじゃない」 妃芽之くんが「食べていい?」って聞いたから、どうしようか戸惑う。 「あの人、料理するの?」 「しないよ。ああ、でも今はこの件で本家の敷居跨げないから一人暮らしか。自炊始めたのかも」  良い焼き色がついたウインナーを一つ、口に放り込む、「まあまあかな」と言った後、再びウインナーを手に持った。 「毒はないようだよ」 「……ありがとう」  僕が食べないだろうと、廃棄するぐらいならと無理に食べてくれているのが分かった。  なので、無理させないように僕もオニギリを食べた。  ああ。  友達は心も体も、大事な家族も壊された。    壊れた友人を見るのが辛くて悲しくて苦しくて。  自分も壊れていたかもしれないって怖かったんだ。  でも僕が利圭みたいに壊れなかったのは、きっとこの匂いのせいだ。  悲しくて、それでも僕を心配してくれた匂い。僕のことを考えながら作ってくれたのが分かる。  分かるから、特別美味しいわけじゃないのに涙がこぼれた。 「どう、どうしたらいいの」  許せないような傷を一生負わされたのに。  彼の匂いを嗅ぐたびに、苦しくなるんだ。  もういいよ。消えてくれって思うのに。 「もう懲りてるから、壮爾くんのことを傷つけることはないよね。許せるなら、あいつの謝罪か愛を受け取るしかないんじゃない」  だって、君たち、番なんだから。

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