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三、免罪符と運命⑫

 ***  Side:沖沼宥一郎  従兄弟が無理やり番にした相手が、もう二週間もヒートが収まらずにいる。  体力も落ちているし、何よりもヒート促進剤の注入しすぎらしく、普通の体質に戻るかも危ないらしい。  従兄弟の征一郎は、学業優先と父親に言われたのを忠実に守るかと思ったが、学校を休み朝から晩まで番のお相手。  ……病室の中で、ずっとセックスしてるってことか。  好いた相手に嫌われてもセックスだけはできるんだから、まあ結果的にはいいんじゃねえの。  絶対に嫌われてるって落ち込んでいた時よりも、少なくても傍に入れてるじゃん。 「で、まだ会えないのかしら」 「この病室の中にいるんだから入ればいいじゃん。エッチ中だろうけど」  俺が病室を指さすと、扇で叩かれた。  横に凛と立つババアは、俺と征一郎の祖母である紫野(むらさきの)。祖父の後妻で、現在はオメガを保護する団体の会長をしている。壮爾さんは、家柄もしっかりしているし両親が献身的に診てくれるが、征一郎の相手の利圭さんは未成年で唯一の肉親が亡くなっている。祖母の団体が保護するのだろう。  すでに利圭さんの父親が亡くなる前に、祖母に相談もしていたらしく引き取りてはバイク屋を経営している父親の親友の佐伯っておじさんらしい。  これからどんなケアをしていくのか、どこまで介入するのか、祖母は自分の目で面接したいと思っていたらしいが、この状況に深くため息を落としていた。 「征一郎が病室から出てくるまで、わたくしは此処で待っています。貴方はどうするの?」 「俺は帰るよ。家の敷居も跨れないから、姉のマンションでしばらく一人暮らしなんでね」 「そう。じゃあお疲れ」  蔑んだ目で俺を見た後、扇で追い払われた。オメガの保護に生涯を注いだと言っても過言ではない祖母。妻亡き後に祖父に惚れられ、十年前ぐらいに再婚した相手だ。  年齢不詳の美魔女って感じで、祖父と同じアルファだと分かっている。が、それ以外は何も俺達には知らされていない。 「それにしても、この病室からとても甘いにおいがするのね。これ、薬の副作用で匂いが強くなってるのかしら」 「さあ。番が居る俺には分からねえっす」

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