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四、すれ違い、見つめ合い①

*** 「そーうじ。妹だってよ」  浮かれた父が、墨と筆を持って、ノックもせずに部屋に入ってきた。 「それ、一億回は聞いた」  朝から浮かれている父に苦笑いしつつも、袖にはできない。切迫早産ぎみだった母の容態が安定し、尚且つお腹の子どもが女の子だと分かってからずっとこの調子だ。  名前の候補を考えては、字面を確認するために筆で書いているらしい。  だが僕が生まれる前もこんな感じだったとお弟子さんたちから聞いていたから、落ち着いていられた。 「それと、利圭くんのヒートが終わったらしいよ」 「ほんと!?」  妹の名前を考えるより、そっちの方をはやく聞かせてほしかった。 「ヒート後だから体力落ちてるけど、2~3日寝れば面会もできるって」 「良かった」  利圭……。  ヒートの治療はきつかっただろうな。利圭の好きなお菓子や和菓子を沢山お見舞いに持って言ってやろう。 「そのぉ、利圭くんさえよければ、うちに養子に来てもいいんだよ?」 「うん。うちに養子に来るか佐伯さんって方に引き取られるかは利圭が決めることだ」  利圭のために毎日お見舞いに来てるとも言っていたし、父親の友達である佐伯さんの方が利圭は安心でいるならそれでもいい。壊れないでいてくれるならば。 「そういえば、急激にヒートが収まったらしい。今日の夜、いきなりって」 「完全に促進剤が体内から消えたのかな」  専門的なことは僕にはわからないしなあ。 「そーじ。今日は親子水入らず、妹の名前考えながらしりとりして一緒に寝よう。布団持ってくる」 「ちょ、流石にそれは」  高校三年生にもなって、親と布団を隣にして寝るなんてファザコンじみていて嫌だな。でも有無も言わさずに親が布団を取りに行ってしまった。  あの父は意外と頑固だ。絶対に『妹の名前考えながらしりとり』をするまで寝ないだろうな。今のうちに明日の用意を済ませておこう。  携帯を充電器に差そうとして、妃芽之くんから画像が送られてきているのを見て手が止まった。 「……なに、これ」

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