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四、すれ違い、見つめ合い②

十枚以上も画像が送られてきている。  しかも全部、彼だ。僕の番とやらの彼だ。  ウインナーを焼くとか玉子焼きとか、初歩的なお弁当のメニューしか作れなさそうだったから、上級者向けの花びらの砂糖漬けを渡してみた彼だ。  お弁当のお礼にしては高級なお返しだと僕も思う。  僕も花弁の砂糖漬けは、紅茶に偶に使う程度。お菓子に使えなんて、単なる意地悪だった。  なのに送られてきた写真は、胸元に赤いハートのフリフリエプロンを来た彼の姿。  ボウルの中を必死で混ぜている姿や、オーブンレンジの取扱説明書を読んでいる姿、携帯の画面を確認しながら材料を計っている姿。  彼は上級者向けのお菓子を、ハートのフリフリエプロン姿で作ってくれているらしい。  僕の前で偉そうに運命だとほざいていた、生意気な年下の番が、お菓子。  可愛いエプロンを着て、必死の形相でお菓子を作ってる。 「ふ……ふっ」 「壮爾の笑い声がする」  枕を持っていた父が襖の前で呆然としているので、すぐに笑うのをやめた。 「父さん、ピンク色の枕なんですね」 「誤魔化しても無駄だ。今、笑ってたよな」 「さあ」  敷布団を敷きながらも、まだ僕の顔を観察している。これではメールの返信もできない。 「そんなに詰めないで、離れてください」  布団を離すと、父が寂しそうにこっちを見た。捨てられた子犬のようだ。  普段は、お弟子さんたちは父の無表情の顔をうかがって緊張しているというのに。 「何を見てたんだ。父さんにも見せろ」 「見せません。はやくしりとりしましょう」 「エッチな奴?」  ぶっ  思わず吹いて、父の顔に盛大に唾をかけてしまった。 「いや、ナウい言い方は、えちえち?」 「いい加減にしないと、一緒に寝ません」

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