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四、すれ違い、見つめ合い⑥
Side:香川壮爾
薔薇の花びらの砂糖漬けで作ったシフォンケーキは、宝探しという名前が付けられた。
切っても切っても、花びらが見つからなかったからだ。
妃芽之くんが笑いながら探していたけど見つからず、小さく縮んだ赤い塊を見つけた時、床を転げまくって床を叩きまくり文字通り笑い転げていた。
当の本人は悔しそうに両手をぐーにして握りしめていた。
「俺が全部食うよ」
持って帰ろうとしたので、妃芽之くんが掴んでいた塊を一口食べた。
味はまあ可もなく不可もなく、普通ってとこかな。
お菓子どころか料理なんて作ったこともない僕からしてみればすごいことだ。
「別に無理に食べなくていいし」
「まあ無理はしないことにしてるよ。努力は認めることにしてるので」
誰にも見つかりたくなかったらしいから屋上に呼び出され、妃芽之くんがボディガードとして着いてきてくれたが、いざシフォンケーキを見て面食らった。
タッパ四つ分もあるけど、これ全部食べ切る自信ないし、おどうしてそんなに作ったんだろう。
「エプロン、似合ってましたね。学校でもあのエプロンがいいんじゃないですか」
「だよねー。僕もそう思う」
「壮爾さんがそういうなら、家庭科ではあのエプロンで行くけど。『壮爾さんに似合うって言われたから』って説明させてもらうからな」
むきになって言う姿は、なかなかに可愛い一年生だ。
もちろん、彼と接点があるなんて言いふらされても困るのでお断りだ。
「でもさあ、せっかく可愛いバラの花びらが原形ないなんて、壮爾くん悲しいよね」
「まあ」
今まで失敗なんてしたことがなさそうな彼は、悔しそうにそっぽを向いてしまった。
別に味も悪くないし、ただ単に花びらの入れ方が悪かっただけだと思うんだけど。
「宥一郎ね、一グラム単位で計って超正確にレシピ見て作ってたんだよ」
「じゃあなんで花びらが原形ないの?」
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