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四、すれ違い、見つめ合い⑩
彼のせいで、色々と僕の気持ちは複雑だった。
今まで少女漫画で騒いでいた穏やかな日々が嘘みたいだ。
「そうそう。壮爾くん」
「はい」
利圭のお見舞いにお土産を買っていこうと思っていたが、零時先生がポケットから取り出した抑制剤に、面食らった。
「体温が少し上昇してきています。ヒートになる周期がまだ君は分からないから、一応これ持ってて。即効性の抑制剤は座薬だけど、この抑制剤はヒートの2~3日前から飲めば激しいヒートは抑えられるから」
「助かります」
母にはヒートのことは聞きにくい状況だし、父は今、言い方が悪いけどうんざりするほど過保護になってピリピリしている。身体の様子が自分でも違和感を感じたら飲み始めたらいいらしい。
僕にヒートが来るかもしれない。
無理やりヒートが来たせいで、次から来るようになるかもしれない。
その時は、あの日のように身体が熱くなって、身体の奥に刺激や熱を求めて、心と体が別々の感情で動き始めてしまうのだろうか。
「……」
そしてその欲望は番じゃないと収まらない。
彼を、自分から欲してしまうのだろうか。
億劫だし面倒くさい。
そして恋愛を知らずに味わった快楽は、とても怖かった。
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