70 / 91
五、転がる石には苔が生えぬ⑤
本当に帰って行ってしまった。
えー……。えええ。まじか。
生徒会長と何日間セックスしてたのか数えてないけど、その前もクラブの地下で何日エロイことしてたっけな。不特定多数にスマタとフェラはしてもらったけど、そんなんで性病なるか?
えー。他のちんこをじっくり見たことがないからわかんねえ。生徒会長のちんこどんなだっけ。俺と何が違ったっけ。うーん。
「津々村くん、しばらく零時先生が休みなので――」
「うわっ」
看護師がノックもせずに入ってきたせいで、ベットから落ちそうになってしまった。
「ごめんねえ。明日から先生がしばらく休みなのよ。あともう少しでご飯よ」
ここの看護師長らしいおばあさんは、誤ったくせに全く悪びれがない。貫禄があるし言葉で勝てなさそうな迫力だ。
「何か困ったことはない? 変わったこととか体調とか」
「ねえっす」
一日三回の検温をチェックしつつ、俺の顔色と脈拍だけ計って出ていった。
誰にちんこ見せればいいんだよ。このままではデリヘル呼べないじゃんか。
携帯の登録している名前をスライドしつつ、俺は答えの出ない迷宮に飲み込まれていった。
***
Side:香川壮爾
放課後、部室に顔を出し靴箱へ向かうと、準備体操をしている沖沼くんが僕を待っていた。
「ちょっと待ってて。5分でいいから、ひとっ走り家に帰ってくるから」
「……デートするとは言っていません」
「店員全員オメガだし、紫野っていうばあさんが茶出してくれるから」
「行きません」
「5分で帰ってこなかったら、帰っていいから。ほんと待ってて。渡したいもんがあるから」
帰りたい。関わりたくない。強引なのは大嫌い。
そう思うのに、必死な匂いが伝わってきて複雑だ。いますぐ否定したいのに、どうしても番の性が邪魔をしてしまう。
「待ってろよ!」
クラウチングスタートで走って行ってしまった。今から家まで戻って何かを持って戻ってくるというのか。
……3分で帰ってやる。
「はあ」
靴箱にもたれて大きなため息が漏れたのと、利圭から連絡が来たのは同時だった。
ともだちにシェアしよう!