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五、転がる石には苔が生えぬ⑨

 利圭の結果を聞いて驚いた。結果的には初期段階らしい。  性器の先端が乾燥してかさかさになっているのだが、塗り薬を塗っての治療らしい。 「くっそお。あのBARの地下で貰ったんじゃん。結果的にあそこって沖沼が薬や避妊具提供してる、金持ち用の合法な乱交場だろ。結局沖沼家のせいじゃん」 「……飛躍しすぎだ。薬塗れば数日で収まるって言ってたろ」  少し落ち込んでいた利圭だが、急に噴出した。 「ってか、だったら番にも移ってんのかね。あいつに、性病検査しろって言ってきてよ」 「いい加減にしなよ。僕は華道の稽古もあるから帰るよ」 「一緒に、あいつが検査されるの見ようぜ」  ゲラゲラ笑う元気があるなら大丈夫だな、と軽くチョップして、お土産にコンビニで買ったお菓子を数個置いて帰ることにした。 「あ、病院のご飯不味いからさ、ふりかけお土産に欲しい。瓶に入ったご飯のお供みたいなのも」 「……はやく退院しなよ」  好き嫌いできるような体型でもないのに。ヒート前と比べると明らかに体重が落ちている。  どこか変わってしまった部分は僕からでもはっきり分かる。それでも二度とあんなことが起きないように、利圭の神経が図太くなるならば多少のゆがみは忘れてもいいと思うんだ。   ***  帰宅すると父は、仕事が終わってすぐに母のもとへ。祖母に捕まり今日はそちらに泊って始発で帰るようだ。  母の体調もいいらしいし、僕の様子も知っている父は、母も一度帰ってこないかと話をするらしい。母には心配ばかりかけたので、安心させてあげたいが、今は自分とお腹の子のことだけ考えてほしい気持ちもある。 「壮爾さん、食事ができていますよ」  着替えて廊下を歩いていると、家政婦さんの宮地さんが台所から顔を出した。  母が入院してから父が呼んだ方だが、父の幼少のころから香川家で家政婦をしてくださっていた方らしい。今はお孫さんの面倒があると引退していたのだが、週に二度、来てくれるようになった。 「ありがとうございます。いい匂いが玄関に入った時からしていたので、お腹が空きました」

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